2009 Fiscal Year Annual Research Report
透過電子顕微鏡による有機電界効果トランジスタの構造解析と特性向上
Project/Area Number |
20860041
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
徳永 智春 Nagoya University, 工学研究科, 助教 (90467332)
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Keywords | 有機薄膜 / 機械加工 / 透過電子顕微鏡 |
Research Abstract |
昨年度,集束イオンビーム法(FIB)を用いて有機薄膜の構造解析を試みたが,FIB加工による試料ダメージにより,薄膜の構造が失われ透過電子顕微鏡(TEM)による解析が困難であることが判明した.今年度はFIB法よりも試料にダメージが少ないと考えられる機械加工法によってTEM試料を作製し,TEMによる構造解析を行うことで,機械加工の有用性を調査した.薄膜試料では機械加工中に薄膜が基板から剥離する問題が懸念されたため,薄膜よりも大きく機械加工しやすい有機結晶を作製し,薄膜化することでTEM試料とした.有機結晶の作製は,温度傾斜が可能なスリーゾーン炉を用いて作成を行った.原料には昨年度同様ペンタセン粉末を用いた.ペンタセン粉末をスリーゾーン炉の昇華部に設置し昇華させ,キャリアガスであるアルゴンにより輸送し,炉内温度傾斜によって温度が低下する過程において有機分子を結晶化させた.作製された有機結晶は3mm×1mm×1mmの柱状の結晶である.結晶は低速ダイヤモンドブレードによって切断され,その後,くさび形状となるように3度の傾斜をつけて有機結晶を研磨し,TEM試料とした.TEM観察には昨年度の研究から明らかになった,所持する機器の中で有機結晶に与えるダメージが最も少ない加速電圧200kV,照射電流密度2pA/cm^2の条件で観察を行った。観察はTEM像による形状及び電子線回折法による結晶構造を調査した.TEM観察の結果,観察によって試料の形状に変化は確認されなかった.また,結晶質であることを示す明瞭な電子線回折スポットが得られた.回折スポットから算出された有機結晶の面間隔はX線回折法から得られるペンタセンの面間隔と一致していた.この結果から機械加工は有機結晶にダメージを与えることの無い加工法であり,有機材料のTEM試料加工には現状で最も適した方法であることが判明した.本手法を用いることで,今後高分解能TEMによる観察も実現することが可能となり,有機薄膜における局所構造解析の可能性を見出すことに成功した.
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