Research Abstract |
本研究では,微小径ドリルの折損回避を目的として,磁気歯車方式による非接触動力伝達機構の技術をトルクリミッタ機能へ応用した.磁気歯車とは,ネオジウム系の強磁性材料に対してラジアル方向に分割し,N極,S極と交互に着磁された永久磁石である.磁力により向かい合う異なる磁極が追従することによって,非接触で動力およびトルクを伝達する(以降,伝達トルク).この永久磁石を用いた伝達機構は,ある一定以上の負荷を受けると磁極が追従せず脱調し,動力伝達を遮断する特徴がある.脱調は,工具に受ける慣性力が小さく,応答速度も速い.また,伝達トルクは,永久磁石間の距離(以降,伝達距離)によって容易に調節することができる. 本加工機の伝達トルクと伝達距離に関する基礎データを測定した結果,伝達距離が長くなるほど,伝達トルクは小さくなることが分かった.これは,永久磁石表面からの距離が長いほど,磁束密度が小さくなるためである.基礎データを基に,微小径ドリル(φ0.5[mm])の折損トルク(1.9[N・cm])以下に閾値を設定し,微小径ドリルの折損回避を試みた.伝達距離0.5[mm](伝達トルク:3.4[N・cm])の条件を用いた結果,微小径ドリルはねじれによる折損が発生した.一方,伝達距離2.0[mm](伝達トルク:1.4[N・cm])に設定した結果,微小径ドリルの折損を回避することに成功した. また,アルミニウムに対して穴加工した結果,加工深さが1mmを超えるとスラスト方向の圧力が急激に上昇し,曲げによる折損が確認された.そこで,本加工機の工具送り部(スラスト方向)の動力伝達に対しても磁気歯車方式を用いることで,曲げによる折損を回避することに成功した.この結果,本加工機では,微小径ドリルの曲げによる折損およびねじれによる折損の両方を同時に回避することができることが可能となった.
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