2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20860091
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
野際 公宏 Japan Atomic Energy Agency, 安全研究センター, 研究職 (80465989)
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Keywords | 酸化物分散強化型鋼 / 3次元アトムプローブ / 超短パルスレーザー |
Research Abstract |
本研究では透過電子顕微鏡(TEM)による観察とレーザー駆動3次元アトムプローブ(3DAP)による分析法を併用し、酸化物分散強化型(ODS)鋼中の酸化物粒子の分散状況および構造評価により、強化機構の解明を行うことを目的とする。特に高速増殖炉用に実用化研究が進められているODS鋼はマルテンサイト(α')相と残留フェライト(δ)相の2相鋼であるが、残留フェライト相の体積率が大きいほど高温強度特性が高いことが明らかとなっている。一方で、これまでに単相のODS鋼では、TEMと3DAPのそれぞれの分析評価により観察される酸化物粒子とは素性が異なることが指摘されていた。本研究では「TEM-3DAP供用試料ホルダー」を用いて、2相ODS鋼の分析評価を実施し、各相における酸化物粒子の分散状況から、ODS鋼における粒子硬化機構の定量的な検討を行った。 TEMにより観察される酸化物粒子の数密度は10^<22>m^<-3>のオーダーであり、3次元アトムプローブによる分析結果と比較して2桁程度低いものであった。アトムプローブで検出される酸化物粒子の多くは非化学量論的な組成であり、母相の鉄を多く含むクラスター状のものであったことから、これらの酸化物粒子では通常のTEM観察では検出が困難であることが、両分析法による結果が異なる原因であると考えられる。 3DAPによる分析結果では、各相とも酸化物粒子のサイズは約3nm以下と同程度であったが、数密度はδ相の方がα'相よりも4倍ほど多く、これらの結果は機械特性試験の結果ともよく一致するものであった。このことから、9Cr-ODS鋼の優れた高温強度特性はδ相における酸化物粒子の高密度分散が寄与していることが、本研究におけるナノスケールの微細構造解析から明確に示された。
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Research Products
(1 results)