Research Abstract |
本研究の目的は,大型・柔軟宇宙構造物の姿勢を,太陽光圧を積極的に利用して能動的・安定的に制御する手法を確立することである.具体的な適用対象として,宇宙空間で数10m以上の大面積の薄膜を遠心力で展開し,膜面に対する太陽光圧を推進力として利用して宇宙空間を航行するソーラーセイルを選定し,太陽光圧を利用した姿勢制御手法について研究を進めている. 平成21年度は,まず,平成20年度に試作した太陽光圧の反射率を電気的に制御する姿勢制御デバイスの宇宙環境耐性評価をより詳細に行った.具体的には,昨年度実施できなかった紫外線照射試験を実施し,外観・性能面での劣化を評価し,昨年度に実施したその他の耐環境性試験も含めて,本デバイスの宇宙環境耐性を確認することができた.次に,本研究で提案する姿勢制御手法の性能評価を行った.まず,昨年度に構築したソーラーセイルの数値モデルに対して,姿勢制御デバイスの電源ON時/OFF時双方の太陽光吸収率(α)/赤外放射率(ε)によって発生する熱輻射に起因する面圧や,セイル膜面のたわみによる寒効的な反射率の変化,材料の反射率の入射角依存性などの観点からモデルを詳細化し,セイルの展張状態での形状をより詳細に解析した.その上で,本研究で開発した姿勢制御デバイスを用いた姿勢制御手法のより現実的な性能評価として,上記モデルを用いた姿勢制御シミュレーションを行い,ソーラーセイルとして十分な姿勢制御性能を有することを確認した. さらに,本研究で提案する姿勢制御デバイスを,2010年度打ち上げ予定のソーラーセイル実証探査機「イカロス」に搭載し,姿勢制御実験を実施することとした.打ち上げ前の各種環境試験を昨年度に無事完了しており,2010年度中に惑星間軌道上でのソーラーセイルの姿勢制御実験を行い,本研究成果を実証する予定である.
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