2009 Fiscal Year Annual Research Report
多種間の比較ゲノム解析による新規メチル化制御配列の同定
Project/Area Number |
20870008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡村 浩司 Ochanomizu University, 生命情報学教育研究センター, 特任講師 (80456194)
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Keywords | DNAメチル化 / CpGアイランド / 脊椎動物 / 新口動物 / エピジェネティクス / 進化 |
Research Abstract |
ゲノムDNAメチル化は哺乳類に限らず、原索動物や棘皮動物にも見られ、遺伝子発現制御およびゲノムの安定性に重要な役割を果たしている。しかし脊椎動物と無脊椎動物との間にはメチル化パターンに大きな違いがあることが指摘され、哺乳類ではCpGアイランドを除いてほとんどの領域がメチル化を受けるのに対し、無脊椎動物であるホヤではメチル化を受ける領域と免れる領域が広い範囲で半々ずつ見られることが知られている。また局所的なメチル化状態はCpGの出現頻度により推定が可能で、哺乳類のCpGアイランドに限らず、無脊椎動物であるホヤにおいてもCpGの出現頻度からメチル化、非メチル化領域を大まかに推定することができる。しかしながら従来、脊椎動物と無脊椎動物のメチル化は別のものと考えられてきたため、統一された評価基準が用いられてこなかった。そこで本研究ではゲノムワイドなメチル化パターンの程度を多種のゲノムで比較するイン・シリコ解析法を提案することで、エピジェネティクな変化の流れを追い、両グループを分ける明確な境界が見られるのかを調べた。その結果、新口動物であるウニ、ナメクジウオ、ホヤ、魚類、哺乳類において、進化系統に沿ったメチル化パターンの段階的な変化が見られ、進化におけるエピジェネティックな変化を反映した解析法であることが示された。さらにこの手法を、6種の魚ゲノムに当てはめたところ、無脊椎動物の性質に近い種も見られた。以上のことから、現在よく知られているマウスやヒトのメチル化パターンは初期脊椎動物において突然獲得されたというよりも、むしろ無脊椎動物の断片的なメチル化から徐々に拡大、維持されたことにより確立された可能性が示唆された。本研究は新しいバイオインフォマティクスの手法を導入することにより、今まであまり手が付けられていなかったエピジェネティックな分子進化に新たな知見を与えることができた。
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