2008 Fiscal Year Annual Research Report
果実をめぐる多様な昆虫群集が介在した絶対送粉共生系の進化的安定性
Project/Area Number |
20870021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川北 篤 Kyoto University, 大学院・地球環境学堂, 助教 (80467399)
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Keywords | コミカンソウ科 / ハナホソガ属 / 絶対送粉共生系 / 能動的送粉行動 / 進化的安定性 / 選択的中絶 / 捕食寄生者 / コマユバチ科 |
Research Abstract |
生物種間の相利的な共生関係は、両者がそれぞれの利益を最大化しながらも、互いの利益とコストの釣り合いが保たれている関係と捉えることができる。しかしこのような状態は、過剰に利益を搾取する個体の出現に対して極めて不安定であると考えられるため、共生系一般にそれらをを進化的に維持するための何らかのメカニズムが存在することが理論的に予測されている。 平成20年度における研究から、ハナホソガの若齢幼虫は種特異的なコマユバチ科の捕食寄生者による攻撃を受けており、かつ捕食された幼虫はその時点で死亡するため、種子の食害が大幅に軽減されることを、日本産コミカンソウ科植物3種において明らかにした。またコミカンソウ科植物の幅広い分類群についてコマユバチのサンプリング、および分子系統解析を行い、すでに得られているコミカンソウ科植物とハナホソガ属の系統樹と比較することで、植物-送粉者-寄生者の三者がほぼ同年代に多様化を始め、進化の歴史を通じて互いに常に関わり合ってきたと考えられることを明らかにした。これらの発見は絶対送粉共生系の進化的安定性に共生系の第三者である捕食寄生者が介在していることを示した点において、生物種間の共生系の理解に新たな知見をもたらしたものであるといえる。 またカンコノキ属植物の果実にはハナホソガやコマユバチのほかに、より大型のメイガ科、シャクガ科、ハマキガ科を含む多様な種子食昆虫群集が見られる。これらもコマユバチ同様、ハナホソガ幼虫の大きな死亡要因となっていると考えられるため、本年度はこれらの昆虫のサンプリングを行い、形態および分子データに基づき種多様性の解明、および寄主範囲の特定を行った。
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Research Products
(11 results)