2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20880008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 慶美 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特任研究員 (30507885)
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Keywords | 海産魚 / 希釈海水 / 陸上養殖 / E-カドヘリン / 浸透圧調節 |
Research Abstract |
硬骨魚類が様々な塩分環境に適応する上で、体液の浸透圧を能動的に調節することは必要不可欠であるが、体表を介した水やイオンの受動的な透過を最小限に抑えることも重要だと考えられる。これまでの知見において、硬骨魚類が体表上皮における透過性を抑える上で環境水中のカルシウムイオンが重要な働きをすることが示唆されている。そこで本研究では、ティラピア(Oreochromis mossambicus)の鰓をモデルとして用い、硬骨魚類の体表上皮における水やイオンの透過性について環境水中のカルシウムイオンの影響に着目して検証した。ティラピアの鰓を脱イオン水、0.1 mM、0.5 mM の塩化カルシウム水溶液に浸漬し、鰓上皮を通じた水の流入量を鰓の重量変化として捉えることで、環境水中のカルシウム濃度と鰓上皮の透過性の関連を調べた。次に、銀染色を用いて鰓から漏出してくる塩化物イオンを検出することにより、鰓上皮のどの部分で透過が起こっているのかを調べた。さらに、上皮性組織に存在すると考えられる細胞接着因子のうちで、カルシウム依存的に結合を形成するE-カドヘリンのホモログをティラピアにおいて同定した。そして、ヒトのE-カドヘリンに対する抗体を用いて免疫染色を行い、ティラピアの鰓におけるE-カドヘリンの局在を調べた。なお、ティラピアにおける抗体の特異性はWestern blottingにより確認した。鰓の水透過性測定実験では、脱イオン水中にカルシウムを加えることで、鰓上皮を通した水の流入が抑えられた。また、銀染色を用いた鰓上皮の観察では、上皮細胞の境界において銀の沈着が観察された。このことから、上皮細胞の細胞間隙を通って塩化物イオンが流出していると考えられる。さらに免疫染色の結果から、細胞接着部位にE-カドヘリンが局在している染色像が得られた。以上の結果から、E-カドヘリンが体表上皮における水やイオンの透過性を抑える上で重要であることが示唆される。
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