Research Abstract |
本研究結果から,水田地区における排水路の底泥に含まれる窒素,アンモニア態窒素,リンの経時的な変化が明らかとなった.これにより,周辺環境に負荷を与えないための適切な施肥管理や土地利用,底泥の灌漑などの効果的な対策を講じることが可能となる.底泥に含まれる全窒素,アンモニア態窒素,全リンの2008年5月〜2009年1月の平均値は,乾燥底泥1kg当り1100mgN,62mgN,260mgPであった.農業排水路の底泥には,砂分が多く含まれるため,隣接する琵琶湖の底泥に比べて,栄養塩類量はおよそ半分程度であった.底泥中の窒素の経時変化としては,灌漑期に多く,非灌漑期に少ない傾向が見られた.これは,灌漑期には肥料由来の窒素を含んだ濁水が排水路に流れ込み,底泥として堆積する一方で,非灌漑期には底泥からアンモニア態窒素の溶出によって窒素が減少していくためと考えられる.底泥と排水の窒素の経時変化には,調査期間を通じて,高い相関性が見られたが,灌漑期と非灌漑期では,排水と底泥の相互関係にとって支配的な要因が異なると推察された.つまり,灌漑期においては,ポンプ稼動や営農などの人的要因および堆積や巻上げなどの物理的要因が大きく作用し,非灌漑期においては,溶出や吸着などの化学的要因が大きく作用すると推察された.底泥から窒素の供給があるため,非灌漑期の排水の窒素濃度は,晴天日においても,代かき期や降雨時と同程度の高い値を示し,年間の窒素の地区外流出負荷の5割に相当する約20kg/haの流出負荷が非灌漑期に生じた.一方で,底泥中のリンは,灌漑期の後半に多くなる傾向が見られた.したがって,底泥中の栄養塩類量から判断すれば,浚渫の実施時期は,灌漑期終了後が最適であると結論づけられた.また,本研究成果により,水田地区からの排出負荷を削減するためには,非灌漑期の排水路管理が必要であることが示された.
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