2009 Fiscal Year Annual Research Report
心腎連関に果たす低酸素転写調節因子HIFの糖化修飾異常の役割の解明
Project/Area Number |
20890053
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 哲洋 The University of Tokyo, 保健・健康推進本部, 助教 (90508079)
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Keywords | 心腎連関 / HIF / 糖化修飾 |
Research Abstract |
本研究では、臨床的に広く認知されている心腎連関の現象に対し、(1)慢性腎障害患者にてしばしば認められるタンパクの糖化異常が(2)低酸素応答性転写因子HIF (Hypoxia-Inducible Factor)の機能的減弱をもたらし、(3)低酸素組織障害を増悪させる、という仮説に対して分子生物学的検討を行った。 Methylglyoxal(MG)は代謝の過程で産生される極めて細胞毒性の強い副産物で、慢性腎不全状態において生体内に蓄積され、リジン/アルギニン修飾を介してAGEs (Advanced Glycation End Products)の形成に関与している。そこで本研究ではまずMGを候補物質とし、HIF-α鎖の発現およびHIF応答性luciferaseレポーター遺伝子(HREluc)の低酸素発現誘導に及ぼす影響を調べたが、MGによるHIF-αの発現量に有意な変動は見られず、また、HIF応答性レポーターに対する同物質の影響も認められなかった。 一方で近年、HIFの機能的減弱は高血糖状況下においても観察されることが報告されているが、高血糖環境はMGが産生され、機能的役割を果たす場でもあることから、次に高血糖そのものがHIFの発現・機能に果たす影響を検討した。高血糖刺激はHIF-1α鎖の発現量に影響を認めなかった一方で、HIFの転写活性能の指標としてのHRElucレポーターアッセイにおいて、最大20%前後の転写活性能の変動をもたらした。本結果は細胞に内在する低酸素転写応答のプログラミングが高血糖環境にて修飾を受けている可能性を示唆し、心腎連関ならびにメタボリックシンドロームの分子メカニズム解明の手がかりとなりうる重要な知見であるため、今後詳細な検討が必要であると考えられた。
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