2009 Fiscal Year Annual Research Report
孤発性筋萎縮性側索硬化症の剖検脳脊髄組織におけるRNA編集酵素活性異常の解析
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20890054
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日出山 拓人 The University of Tokyo, 保健・健康推進本部, 助教 (30511456)
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症(ALS) / RNA編集異常 / 剖検脳脊髄組織 / GluR2 Q / R部位 / ADAR2 |
Research Abstract |
孤発性筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis、以下ALS)では、グルタミン酸受容体サブユニットであるGluR2のRNA編集異常が疾患特異的に生じていることが、少数例の孤発性ALS例と疾患対照、正常対照例の剖検組織の検討から明らかにされている。孤発性ALSの運動ニューロン死を引き起こす分子メカニズムを明らかにするため,GluR2 Q/R部位の編集異常の疾患特異性を、様々な孤発性ALSの病型で検討し、この分子変化の上流の分子異常と考えられる、RNA編集酵素adenosine deaminase acting on RNA type 2(ADAR2)の活性低下の有無を、脊髄運動ニューロン(シングルセル)を用いて検討した. 平成20年度の組織の検討でシングルセルサンプルとして使用可能と判断された凍結剖検正常対照群5例及び孤発性ALS群約20例(四肢型,球麻痺型,ALS-D, Basophilic inclusion bodyを含む若年発症例のそれぞれを含む)から脊髄運動ニューロン1個を単位として切り出し,GluR2 Q/R部位編集率を算出した.それぞれの群についてプールした運動ニューロンを用いてADAR2 mRNA発現量もreal-time PCR法で定量した. その結果,正常対照群では100個以上の全ての運動ニューロンで編集率は100%に保たれていたが,孤発性ALSと診断された症例においては,全症例で編集率が100%未満に低下した運動ニューロンが認められ,ADAR2 mRNA発現量も正常対照に比し、有意に低下していた. 以上から,この分子変化は様々な表現型をとる孤発性ALS全てに共通することが、明らかになり、ADAR2活性低下が原因である可能性が示唆された.本研究から,ADAR2活性低下を回復させることによりALSの特異的治療の開発につながることが期待される.
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