2008 Fiscal Year Annual Research Report
加齢に伴う骨芽細胞・脂肪細胞分化スイッチにおける転写因子Mafの役割
Project/Area Number |
20890060
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
西川 恵三 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 特任助教 (30516290)
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Keywords | 骨芽細胞 / 脂肪細胞 / 間葉系細胞 / 転写因子 / c-Maf / 骨粗鬆症 / 脂肪髄 / 老化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、骨粗鬆症患者が呈する脂肪髄を伴う骨量減少の原因の一つである、老化がもたらす骨芽細胞と脂肪細胞の分化振り分け機構の破綻に関わる転写制御機構を明らかにすることである。本研究では、この制御に関わる転写因子を同定するために、マウス新生児頭蓋冠由来の骨芽細胞のトランスクリプトーム解析を実施した。転写因子1470の発現データを抽出した結果、骨芽細胞分化に伴い発現上昇する遺伝子が667同定され、この中で163個の転写因子が4倍以上の発現上昇を示し、骨芽細胞分化と関連あることが示唆された。次に、加齢によって影響を受ける転写因子群の同定を行うために、若齢および成熟マウス由来の骨髄ストローマ細胞のトランスクリプトーム解析を実施した結果、上記の163個の転写因子の中で、52個の転写因子が、加齢に伴い半分以下に発現低下することが明らかとなった。この52個の転写因子は、加齢がもたらす骨芽細胞分化の変化の分子基盤を司る有力な標的となることが予想される。52個に含まれる転写因子の中で、Mafの機能解析を実施した。Maf遺伝子欠損マウスは出生後死亡するため、新生児あるいは胎児における骨形成並びに脂肪細胞形成への影響を解析した。骨表現型を、全骨格標本及びμCT解析によって検討を行った結果、顕著な骨形成の低下が観察された。実際に、Maf遺伝子欠損マウスにおいては、骨芽細胞の数が減少していた。この一方で、骨髄腔内の脂肪細胞の変化は観察されなかったが、脂肪細胞の重要な制御因子であるPparγの発現量が有為に亢進していた。以上の結果から加齢に伴い発現量の低下を示す転写因子Mafが、骨芽細胞と脂肪細胞分化に重要な機能を有することが示唆される。これまでに、老化がもたらす骨芽細胞と脂肪細胞の分化振り分け機構の破綻を司る転写制御は不明であったが、本研究成果によって、Mafが重要な位置づけを担うことが初めて示された。
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Research Products
(2 results)