2009 Fiscal Year Annual Research Report
加齢に伴う骨芽細胞・脂肪細胞分化スイッチにおける転写因子Mafの役割
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20890060
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
西川 恵三 Tokyo Medical and Dental University, 医歯学総合研究科, 特任助教 (30516290)
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Keywords | 骨芽細胞 / 脂肪細胞 / 間葉系細胞 / 転写因子 / c-Maf / 骨粗鬆症 / 脂肪髄 / 老化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、骨粗鬆症患者の病態である脂肪髄を伴う骨量減少の原因の一つである、老化がもたらす骨芽細胞と脂肪細胞の分化振り分け機構の破綻に関わる転写制御機構を明らかにすることである。昨年度実施したトランスクリプトーム解析の結果、この制御に関わる候補因子として、52個の転写因子を同定し、その中で、発現量の変化が著しいMafに注目した。Maf欠損マウスを解析した結果、骨形成の低下が観察された。この異常は、遺伝子欠損マウス由来の骨芽細胞の初代培養によって、骨芽細胞自律的な効果に起因することが明らかとなった。この時、脂肪細胞分化の著しい亢進も観察された。骨芽細胞と脂肪細胞への分化能を有する細胞株へMafを過剰発現した結果、骨芽細胞分化が亢進する一方で、脂肪細胞分化が抑制されることから、Mafは骨芽細胞と脂肪細胞の分化振り分けを制御する転写因子であることが示唆される。詳細な作用機序の検討の結果、Mafは骨芽細胞分化制御因子Runx2と協調作用することで、骨芽細胞発現遺伝子オステオカルシンや骨シアロ蛋白質の発現を正に制御する一方で、脂肪細胞分化制御因子Pparγの発現を直接負に制御することが明らかとなった。 個体の老化は、DNA障害の蓄積による細胞の増殖能の低下が主因とされるが、このメカニズムでは分化振り分けの異常を説明することは難しい。DNA障害の原因の一つである酸化ストレスの添加に伴い、Maf自身の発現量は大きく低下することから、老化に伴う骨芽細胞と脂肪細胞の分化振り分け機構の破綻には、Mafの量的効果が関ることが示唆される。これを支持する知見として、Mafヘテロ接合型マウスの骨組織を解析した結果、加齢に伴い骨形成が低下するとともに、骨髄腔内の脂肪細胞の数が増加し、Mafヘテロ接合型マウスが骨粗鬆症様の病態を呈する結果が得られている。長らく骨老化に関る細胞自律的な分子基盤は不明であったが、本研究によってMafが老化のスイッチに関与する結果が得られた意義は大きく、今後、Mafの発現量の調節が骨粗鬆症治療にどの程度貢献するかは大変興味深い。
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Research Products
(4 results)