2009 Fiscal Year Annual Research Report
心房細動における炎症の関与-マクロファージの役割に関する検討と治療標的の検索
Project/Area Number |
20890061
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
笹野 哲郎 Tokyo Medical and Dental University, 難治疾患研究所, 特任助教 (00466898)
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Keywords | 心房細動 / 心房リモデリング / マクロファージ / パラクライン作用 / 細胞外ATP / オートクライン作用 |
Research Abstract |
心房細動は、心不全や心臓弁膜症などによる心房伸展の際に発症することが知られている。また、心房細動の発症及び進展には心房の炎症と線維化が重要な役割を果たす。本研究では、心房筋に伸展刺激を加えた際に生じる炎症メカニズムを、マクロファージを中心に検討した。 1.心房筋の伸展刺激により惹起されるマクロファージの遊走能亢進のメカニズム マウス心房筋細胞とマクロファージを共培養し、心房筋細胞に物理的伸展刺激を加えると、マクロファージの遊走能が著明に亢進した。この遊走能亢進はATP分解酵素やgap junction channelのブロッカーにより抑制され、心房筋からgap junction channelを介して放出されたATPあるいは他のヌクレオチドが関与していると考えられた。また、心房筋細胞に伸展刺激を加えるとgap junction channelを介した一過性の細胞外へのATP放出が認められた。放出されたATPは、オートクライン作用によって心房筋細胞のP2レセプターに作用してケモカイン発現を誘導し、その結果マクロファージの遊走能亢進に寄与していることが明らかとなった。 2.マウス病態モデルによる心房へのマクロファージ浸潤 心房伸展刺激をマウスに与え、マクロファージの浸潤の有無を検討した。心房伸展刺激として、低気圧飼育モデル及び大動脈縮窄モデルを作成して免疫組織染色により評価したところ、どちらのモデルでも経時的な心房へのマクロファージ浸潤が見られた。 心房の伸展刺激は、心房筋から放出されたヌクレオチドによるオートクライン/パラクライン作用を介してマクロファージの浸潤を惹起することが明らかとなった。これは心房伸展における心房炎症の初期メカニズムと考えられ、心房細動の新たなupstream治療の標的となると考えられる。
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