2008 Fiscal Year Annual Research Report
顎口腔領域の修復・再生および破壊に関わる幹細胞の性状解析と放射線生物学的検討
Project/Area Number |
20890065
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
阿部 成宏 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 特任助教 (00510364)
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Keywords | 幹細胞 / 癌幹細胞 / 歯髄幹細胞 / 放射線治療 / 分化 |
Research Abstract |
[目的および意義]体内の多くの組織には、自己複製と多分化能を保持している幹細胞とよばれる未熟な細胞集団が存在している。顎口腔領域にも、多くの組織幹細胞が存在し、組織の発生のみならず修復・再生を絶えず繰り返していることがわかっている。また、その逆に組織を破壊せしめ、固体の死をもたらす悪性腫瘍においても、同様に癌幹細胞と呼ばれる細胞集団が近年同定され、多くの研究者から報告されており、現在までに、多くの固形腫瘍において報告されている。しかしながら、両者ともその存在の同定および性状解析等に関しては、曖昧なところが多く、ことに顎口腔領域での幹細胞生物学は血球系などに比較して、まだ、未知な点が多い。まして、薬剤耐性能、放射線治療後の変化や、DNA損傷/修復に関する報告は非常に数少ない。[重要性]顎口腔領域の幹細胞においてこれらを詳細に検討することにより、単に幹細胞生物学的な検討のみならず、実際の医療への応用や放射線治療の効率性を考える上で極めて重要と考える。[研究の成果]1.口腔癌幹細胞の分離同定と放射線生物学的特性:ヒト口腔癌細胞株を用いて、無血清培地にてsphereを形成する幹細胞様の細胞集団を分離し、その性状解析と放射線感受性に関する検討を行った。Sphere形成細胞は未分化性を維持しており、適切な環境下にて成熟角質細胞マーカーを発現し、分化能を保持している細胞集団であった。また、放射線感受性に関してコロニーアッセイを行ったところ、Sphere形成細胞が必ずしも放射線抵抗性を示さないことが示唆された。2.ヒト根未完成歯の根尖部歯髄細胞(APDCs)の放射線生物学的検討: APDCsよりSphere形成性の未分化細胞を単離し、これらが、多能性を保持していることを明らかにした。また、放射線照射により、Sphere形成細胞が放射線抵抗性を示し、DNA損傷に対する修復能が高いが、放射線照射したSpehre形成細胞が硬組織への分化誘導において分化能が低下することを見出した。
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