2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20890129
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
加川 夏子 Nara Institute of Science and Technology, 物質創成科学研究科, 助教 (60467686)
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Keywords | インドール / 不斉炭素 / パラジウム / インドレニン / アルカロイド / アリル化 / 国際情報交流 / アメリカ:スペイン |
Research Abstract |
本研究の目的は、脳神経系に強い作用を示すインドールアルカロイド類の合成に有用な、最小単位の有機分子を創り出すことです。インドール骨格を含む有機化合物は、窒素原子を含む芳香族化合物の中で、とりわけ脳神経系に作用することが多く報告されています。私は現在までに汎用されているトリプトファンを原料とする方法は、インドールの3位に不斉4級炭素を持つ標的化合物の合成に適さないだろうと考えました。それは複雑な有機分子を標的とする合成には、最も困難と予想される結合をできるだけ早い段階で形成させてしまうような合成計画が効率的だからです。そこで、様々な官能基を持つインドール体のC3位に、簡便に且つ立体選択的にアリル基を導入して、4級炭素を構築する手法をこれまで検討してきました。その結果、パラジウム触媒を用いてアリルメチルカルボネートから、インドール体のC3位にアリル単位を移動させる方法を見出しました。この手法の特徴は、 1.パラジウム触媒の活性化に、リン配位子が必要である。 2.N-アリル化は、ほとんど進行しない。 3.アルコールやエステルなどの分子内の他の官能基を保護しなくてよい。 4.生成物の骨格は、インドレニン類(3H-インドール)に分類される。 に大別されます。上記1より、リン配位子の最適化を実施しました。2と3の特徴を生かして、インドール骨格を持つ天然生理活性物質を直接変換することを試み、興味深い性質を示す新規の有機分子を報告しました。また4の項目は、ヘテロ環化合物の長い歴史の中で報告例が少ない珍しい分子骨格でありました。その性質を実験的に解明することは、新しい機能性分子の創製につながると判断しましたので、今後も重点的に発展させていきます。
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