Research Abstract |
本研究では,インドールの互変異性体であるインドレニン誘導体を各種合成して,その化学・物理・生物学的な性質を解明することを目的としています.インドール系アルカロイドは脳神経系に特徴的な薬理作用を持つものが多く,創薬研究のリード化合物として潜在的な可能性を秘めています.一方インドレニンは生合成の活性種と想定されたり,全合成研究の中間体として登場するだけに,合成ターゲットとして単離するには不安定な構造を持ち,分子としてこれまで満足に科学調査されていません.そこでインドール化合物を,3位で選択的にアリル化してインドレニン骨格に化学変換する手法を駆使して,様々なインドレニン分子を創出しました.特に市販の天然物ヨヒンビン塩酸塩を,一行程でアリルインドレニン骨格に変換して,3位に不斉4級炭素を持つインドレニン化合物を高い立体選択性で得ることができる条件を見出しました.パラジウムを触媒としたアリル化反応では,(7R)-アリルヨヒンビンが高い収率で得られ,マグネシウムを使った場合には(7S)-アリルヨヒンビンが優先しました.これらの結果を基に立体選択性の発生するメカニズムについてX線構造解析を行ったところ,パラジウムではπ-アリルパラジウム中間体がインドールの空いている側から近づき分子内でアリル化が進行するのに対して,マグネシウムでは,同様に空いている側にいるマグネシウムカチオンの持つ電子反発を避けるようにして,逆側からアリル化されることから立体選択性が異なることが分かりました.また,3,3-ジアリルインドレニン誘導体を各種合成して,3位の4級炭素に不斉を導入すべく検討を行いました.フェニルイミノ基の持つ窒素は配位能が高く,有機金属試薬を用いた誘導体化反応に抵抗を示しました.この性質はインドレニン特有のものであり,インドールと区別されることから,今後有効な活用法を探索していきます.
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