2009 Fiscal Year Annual Research Report
大気圧低温プラズマを用いたハイブリッド人工半月板の開発
Project/Area Number |
20890131
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
桑田 卓 Shimane University, 医学部, 助教 (80509000)
|
Keywords | 半月板損傷 / プラズマ |
Research Abstract |
膝関節半月板の2/3を占める無血行野が損傷すると自然修復が期待できないため通常は部分切除術が行われる。半月板はいったん欠損すると再生しない組織である。半月板の機能が失われた膝関節は関節軟骨の変性が進行して変形性膝関節症をきたす。 そこでわれわれは、一定の強度をもったインプラント表面に細胞を接着させてハイブリッド半月板を作製することを考案した。細胞接着を促進させる手法として、手術室でも使用可能な大気圧低温プラズマ発生装置を使用することとした。この手法はこれまでに報告がなく、最適な照射条件の検索や照射が細胞接着に与える影響などについて詳細に検討した。 プラズマ発生装置の調整段階で、プラズマを繰り返し安定して照射するための放電用アンテナには銅タングステンが最適であることが判った。プラズマ照射の生物学的効果の検討のために、シートへのプラズマ照射と細胞自体へのプラズマ照射を行った。プラズマ処理をした骨性シート上での細胞付着試験の結果、窒素プラズマ照射、無処理、酸素プラズマ処理の順で細胞付着数が多い傾向にあった。実際にシリコンシートをプラズマ照射したのちXPS分析を行い、シリコンが窒化されていることを確認した。この結果からアルゴンガスで生成した大気圧プラズマにアンモニアを導入することでアミノ基の生成、導入が可能であることが判った。細胞自体への照射の結果、一定時間を超えて照射すると細胞増殖を生じなくなり、また剥離した細胞の再接着能が低下することが判った。副作用試験として生体内照射を行った。ウサギ膝関節内に一定時間照射を行った結果、明らかな癒着や軟骨傷害を認めなかった。 以上の結果から人工物へのプラズマ照射が細胞接着を促進させること、生体内への直接的なプラズマ照射が安全であることが明らかになり、ハイブリッド半月板の作製や手術中の関節内組織照射による周辺滑膜細胞の誘導と組織修復を期待できると考えている。
|