2009 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄レベルにおけるオピオイド誘発性知覚過敏の機序の解明
Project/Area Number |
20890132
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石田 亮介 Shimane University, 医学部, 医科医員 (50508934)
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Keywords | オピオイド誘発性痛覚過敏 / レミフェンタニル / Extracellular signal-regulated protein kinase |
Research Abstract |
近年、神経傷害性痺痛や炎症性疼痛、オピオイド投与による中枢性感作に、脊髄後角でのニューロンおよびグリア系細胞内のMAP Kinaseの活性化が関与していることを示す報告が多く見られるようになった。そこで我々はレミフェンタニル投与後の痛覚過敏と、ERK1/2のリン酸化に関係があるか確かめるために以下の実験を行った。雄のSDラットを用い、各群6匹ずっ1)Remifentanil 10μg/kg/min 120分,2)Remifentanil 10μg/kg/min 30分,3)Saline,4)Shamの4群に分け、薬剤を尾静脈に挿入したカテーテルから投与した。投与終了後免疫染色を行い、脊髄におけるERKのリン酸化の程度と局在を調べた。さらに120分投与群と生食投与群でWesternBlot法によりリン酸化ERK(p-ERK)のタンパク量を比較した。また、 ERKリン酸化が痛覚過敏の原因であることを確認するためにMEK阻害薬であるU0126のくも膜下前投与を行った。 結果、行動学的に痛覚過敏を引き起こす120分投与群において、他の群に比べて有意に多くp-ERK陽性ニューロンを認め、ERKリン酸化はニューロンに局在していた。 WBにおいても矛盾しない結果が得られた。ところがU0126の投与は痛覚過敏を抑制しなかった。 一般的にオピオイド投与により中枢神経系におけるERKのリン酸化が起こることは知られているが、それがどのような結果をもたらすかについては定まった見解はない。我々の実験においては痛覚過敏のない30分投与群でのp-ERK陽性ニューロン数が120分投与群に比べ少なかったことから、この変化は単なるオピオイド投与による変化ではなく、痛覚過敏の発生と関連していると考えられた。しかし、ERKのリン酸化を阻害しても痛覚過敏の発生を抑制できなかったことから、痛覚過敏の発生にはERK単独ではなく、他の要素が関係している可能性が示唆された。
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