2008 Fiscal Year Annual Research Report
ピロリ菌のVacA毒素の毒性発現における受容体RPTPalphaの機能解析
Project/Area Number |
20890165
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
久恒 順三 Nagasaki University, 熱帯医学研究所, 研究支援員 (40513180)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 空胞化毒素 / VacA / 細菌毒素 / 毒性発現 / 毒素受容体 / RPTPα |
Research Abstract |
ピロリ菌が産生する空胞化毒素(VacA)の受容体であるRPTPαとの結合がVacAの毒性発現にどのように関連するかについて解析した。まず、U937とJurkat細胞において、VacAがRPTPαあるいは最近報告されたCD18と結合するか否かを免疫沈降法で解析した。その結果、VacAはRPTPαとは結合するが、CD18とは結合しなかった。また、RPTPαとCD18との結合も否定的であった。胃上皮細胞AZ-521ではCD18抗体と反応する蛋白は検出されなかった。そこで、VacAが結合するRPTPαと相互作用する分子を探索する為、AZ-521細胞にV5標識RPTPαを発現させ、V5抗体により免疫沈降させたが、明確に共沈する分子は検出されなかった。並行して、RPTPαをノックダウン(KO)させた細胞株を作製した。RPTPα-KO細胞株の作製は、レンチウイルスベクターを用いて安定発現させるRPTPα siRNAのplasmidを構築し、AZ-521細胞に導入し、Puromycinにより選択した。細胞にVacAを作用させると空胞活性を示すが、RPTPα-KO細胞ではVacAとの結合とVacAの細胞内への取込、空胞活性が抑制された。しかし、RPTPα-KO細胞でもVacAによるp38MAPK,Erk1/2,Aktのいずれの活性化も対照同様に認められ、p38MAPK経路を介して亢進されるCOX-2発現にも変化しなかった。不思議な事に、RPTPαを過剰発現させた綱胞では、VacAによるp38MAPK及びErk1/2の活性化が顕著に抑制された。RPTPαを過剰発現させたことで細胞膜上のraftの分子組成が大きく変化し、VacAの本来の効果に影響が生じたと考えられたが、このRPTPαの予想外の成績を理解するには、さらに発現したRPTPαの細胞内分布、動態などを知る必要がある。
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