2008 Fiscal Year Annual Research Report
外傷性脳損傷における軸索内輸送蛋白・炎症性サイトカインの動態に関する研究
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20890177
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
林 敬人 Kagoshima University, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (40512497)
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Keywords | びまん性外傷性軸索損傷 / 法医病理学的診断 / 軸索内輸送蛋白 / 炎症性サイトカイン / 免疫組織化学 / 受傷後経過時間 |
Research Abstract |
本研究は,法医実務に応用可能なより精度の高いびまん性外傷性軸索損傷(TAI)の診断法,鑑別診断法及び受傷後経過時間推定法の確立を目的としている。目的を達成するために平成20年度は,頭部外傷例の脳梁についてβ-amyloid precursor protein(APP),Neuron-specific enolase(NSE)といった軸索内輸送蛋白質及びInterleukin-8(IL-8),Tumor necrosis factor-α(TNF-α)といった炎症性サイトカインを指標として免疫組織化学的検討を行い,以下の結果を得た。 1.APP:明らかに2種類の染色パターンがあることを見出し,神経線維束の走行に沿って染色されるパターンは外傷性軸索損傷,神経線維束に沿わず散在性に染色されるパターンは低酸素血症に起因する二次性軸索損傷に相当する可能性が示唆された。 2.NSE:受傷後2時間経過例で軸索損傷を示すNSE陽性axonal bulbが認められ,APPと比較し早期診断への有用性を期待させる結果を得た。またNSEもAPPと同様に2種類の染色パターンがあり,今後外傷性・低酸素性軸索損傷の鑑別法に有用か否かを更に検討する。 3.IL-8:神経細胞及び神経線維に陽性所見が得られ,また受傷後経過時間により染色性が変化することを確認した。さらに受傷後3-4日頃よりIL-8陽性axonal bulbが認められ,新たなTAI受傷後経過時間推定法としての有用性が示唆された。 4.TNF-α:受傷後4-7日頃よりTNF-α陽性axonal bulbが認められることを確認した。今後,他のサイトカインについての検討を行い,より詳細な受傷後経過時間推定法の確立を目指している。
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