2008 Fiscal Year Annual Research Report
Gjb2遺伝子優性阻害変異マウスの発育段階におけるコルチ器の機能と微細構造
Project/Area Number |
20890219
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
井下 綾子 Juntendo University, 医学部, 助教 (00514762)
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Keywords | 先天性難聴 / GJB2遺伝子 / 内耳 / コルチ器 / コルチトンネル / モデルマウス |
Research Abstract |
(1)研究の目的先天性難聴は2,000人に1人と高頻度でその半数が遺伝性である。そのうちGJB2(コネキシン226)遺伝子変異は日本人で最も高頻度の原因遺伝子で、早期発見と治療方針を決定する上で本質的な発症原因の探求が重要である。しかしヒトの内耳では生検や侵襲的な生理学的検査は困難なため、ヒトのGJB2遺伝子変異と等価のマウスモデルの組織・機能的評価を目的とした。聴覚の成熟過程での詳細な検討はなされていないためこのマウスの生直後から2週齢までのコルチ器評価を企画した。 (2)研究目的を達成するための研究計画・方法十分にマウスを麻酔後、内耳を摘出し組織学的検査(光顕、電顕、免染)を行う。聴覚が出現する生後11日以降では聴覚機能検査(ABR、DPOAE)を施行した。タイミングよく幼若マウスが搬入されるよう動物繁殖研究所と密に連絡をとり、P2レベルの実験室で万全な対策を講じることができた。 (3)平成20年度の研究実績コルチ器の組織学特徴として、コルチトンネルが形成されるべき生後5日の時点で形成不全を認めた。ヌエル腔も生後8日以降に発現するべきであるが認めなかった。コルチ器とヌエル腔は音伝達に必要な物質を含む外リンパ液が存在する場所である。今回の結果より本難聴の原因の一つあることが示唆された。また内柱細胞内のマイクロチュブリン数の有意な減少が判明し、コルチトンネルの形成不全の原因の一つと考えられた。ABRでは聴覚発現時ですでに高度難聴を示した。DPOAEにおいても同様であった。これまで他施設においてコルチ器形成後組織学的に変性し難聴を生じると報告があったが、我々のマウスでは、コルチ器成熟過程においてすでに形成不全を認め、聴覚発現時期より高度難聴を認めた。
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