2009 Fiscal Year Annual Research Report
Gjb2遺伝子優性阻害変異マウスの発育段階におけるコルチ器の機能と微細構造
Project/Area Number |
20890219
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
井下 綾子 Juntendo University, 医学部, 助教 (00514762)
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Keywords | 先天性難聴 / GJB2遺伝子変異 / GER(内側隆起) / アポトーシス / コルチ器 |
Research Abstract |
研究の意義・目的:先天性難聴は2,000人に1人と高頻度でその半数が遺伝性である。そのうちGJB2(コネキシン26)遺伝子変異は日本人で最も高頻度の原因遺伝子で、早期発見と治療方針を決定する上で本質的な発症原因の探求が重要である。しかしヒトの内耳では生検や侵襲的な生理学的検査は困難なため、ヒトのGJB2遺伝子変異と等価のマウスモデルの組織・機能的評価を目的とした。聴覚の成熟過程での詳細な検討はなされていないためこのマウスの生直後から2週齢までのコルチ器評価を企画した。 研究実施計画:マウスの内耳を摘出し組織学的検査(光顕、電顕、免染)を行う。GER(greater epitherial ridge,内側隆起)を観察する。GERは生直後においてコルチ器支持細胞形成に必要な栄養因子を分泌するが、形成後の生後5日頃から通常はアポトーシスを呈し12日には終了することが多い。以前のマクロ結果においてGJB2変異マウスでは正常体と比しGERの面積が広く、コルチ器形成不全の原因を解明するためにより詳細な研究を要すると考えられた。そこでGERを光顕、電顕にてGER内の細胞の細胞数、面積、アポトーシスの有無に関し日齢を追って評価する。 研究結果:組織学上、GJB2変異マウスのGERにおけるアポトーシスは生後8日より出現し生後12日においても存続し、正常体と比してアポトーシスの遅延を示唆した。(1) GER面積、(2) GER全体細胞数、(3) GER内のアポトーシス細胞数をGJB2変異マウスと正常体を比較した。生後12日において前述の3項目はGJB2変異マウスでは有意に高値を示した。 研究結果の重要性:我々はコネキシン26がGERのアポトーシスと関与し、その結果コルチ器形成不全、及び難聴に起因することを世界で初めて示した。今回の我々の結果は、将来的に先天性難聴の根本的治療を確立するためには重要であると考える。
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