2008 Fiscal Year Annual Research Report
膜結合型プロスタグランジンE合成酵素(mPGES‐1)の発がん過程への関与の解析
Project/Area Number |
20890220
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
亀井 大輔 Showa University, 薬学部, 助教 (80515651)
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Keywords | PGE合成酵素 / mPGES-1 / 発がん / 遺伝子欠損マウス / PGE2 |
Research Abstract |
【目的】膜結合型PGE合成酵素(mPGES-1)はPGE2生合成過程における最終合成酵素であり、炎症性刺激で発現誘導される誘導型の酵素である。本酵素は上流に位置するCOX分子種のうち同じく誘導型のCOX-2と選択的に機能連関する特徴をもつ。本研究では、このmPGES-1に着目しmPGES-1遺伝子欠損マウスを用いたマウス化学発がんモデルの解析を中心に発がん過程への炎症の寄与を解明し、がん治療における新たな分子メカニズムの基盤を確立することを目的とする。【方法】野生型(WT)マウスまたはmPGES-1 KOマウスの腹腔内にAOMを週一回、6週連続投与し、投与開始から12週目における前がん病変および24週目における発がんの評価を行った。【結果】mPGES-1 KOマウスでは、WTマウスと比較して、AOM投与後の前がん病変の発生(12週目)および、腫瘍形成(24週目)のどちらも顕著な抑制を認めた。また、大腸組織切片の病理学的解析の結果、WTマウスでは、がんの病理所見が86%で観察されたのに対し、KOマウスでは38%と顕著な発がん率の抑制を認めた。次にmPGES-1の発現を免疫組織化学染色により検討した結果、WTマウスの腫瘍部位に本酵素の強い発現誘導を認めた。また、WTマウスの腫瘍組織中のPGE2含有量は、正常組織と比較し、顕著な上昇を認めたのに対し、KOマウスでは、WTマウスと比較して、両組織とも有意に低値を示しており、かつ腫瘍形成による変化も認めなかった。一方、mPGES-1 KOマウスの腫瘍組織では、WTマウスと比較して、PGE2以外のPG類であるPGI2、PGD2の含有量は有意な上昇を認めた。【考察】mPGES-1の欠損が、化学発がんを抑制することが強く示唆された。今後、mPGES-1欠損による抗腫瘍効果の作用メカニズムについて、詳細な検討を行っていく。
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