2008 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類の横隔膜獲得プロセスに関する進化発生学的研究
Project/Area Number |
20890228
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
辰巳 徳史 Jikei University School of Medicine, 医学部, 助教 (60514528)
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Keywords | 横隔膜 / 進化学 / 筋芽細胞 / 発生生物学 |
Research Abstract |
哺乳類がいかにして横隔膜を獲得したのかは、祖先である哺乳類型爬虫類がすべて絶滅した現在では軟部組織である横隔膜は化石に残らないためまったくわかっていない。現存する爬虫類、鳥類では胸腔と腹腔を隔てる非常に薄い膜と、肺周囲の膜とを併せたものが哺乳類の横隔膜に相同だと考えられている。この事から研究代表者は鳥類などで肺の周囲に移動する筋芽細胞が哺乳類では進化の過程で胸腔腹腔の膜領域に移動するよう変化したことにより横隔膜の獲得に至ったのではないかという仮説を立てた。そこで本研究では哺乳類のモデル実験動物であるマウス胚とニワトリ胚を用いて筋芽細胞の移動過程を追跡し、種間における筋芽細胞の特徴の違いがどのようにして生まれたかを形態学、進化発生学、分子学的に明らかにする事を目的とした。 この目的を達成するために、横隔膜に移動する筋芽細胞がGFP蛍光タンパク質で標識されるようなマウスの作成を計画し、それに該当しそうなエンハンサー候補であるHoxa5MESエンハンサーの解析を行った。その結果、このエンハンサーは当初期待していた2-5体節で特異的に発現しないことが確認された。そこでこの実験を行うためにPax3-CreとCAG-CAT-EGFPを持つマウスを使用し、体節の細胞を標識して解析をするような実験系に変更した。現在は、研究に使用可能な匹数を準備しているところである。また同時期に行っていた、ニワトリ胚の体節標識実験では肺周囲に移動すると考えていた筋芽細胞が横中隔領域に移動していることが明らかとなった。この移動は哺乳類の横隔膜形成過程と同様で、哺乳類では移動する筋芽細胞が筋細胞への分化できるようになったことが横隔膜獲得への重要なイベントであった可能性が示唆されるような結果が得られた。
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