2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20890229
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
及川 恒一 Jikei University School of Medicine, 医学部, 助教 (20514491)
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Keywords | 幹細胞 / 再生医療 / 分化 |
Research Abstract |
肝幹・前駆細胞は肝細胞と胆管上皮細胞の両方に分化できる能力を持ち合わせているが、この2方向性の分化を制御する分子メカニズムの詳細は不明である。Sall4は器官形成、胎児発生、ES細胞において未分化性維持や分化決定に重要な役割を果たすことが報告されている。われわれはマウス肝臓由来Dlk+CD45-Ter119-肝幹・前駆細胞を分離し、Sall4遺伝子を強制発現またはノックダウンしin vitro培養、in vivo肝幹・前駆細胞移植実験を行うことで肝発生におけるSall4の機能を解析した。Sall4は肝幹・前駆細胞に発現し、肝発生に伴いその発現は減少し、成体の肝細胞では発現を認めなかった。肝幹・前駆細胞をin vitroで肝細胞へ分化誘導培養し、Sall4遺伝子を強制発現すると、形態的また肝成熟化遺伝子発現で肝細胞への分化が顕著に抑制された。またin vitro胆管分化誘導コラーゲンゲル包埋培養を行うと、Sall4遺伝子強制発現により、胆管上皮細胞に発現するCK19陽性のbranching構造)の数および大きさが顕著に増加した。一方Sall4遺伝子ノックダウンによりこれらのbranching構造形成が抑制された。さらにin vivoで胆管障害ヌードマウスへ肝幹・前駆細胞を移植すると、Sall4遺伝子強制発現群でCK19陽性の胆管へより効率的に分化することが確認された。以上の結果からSall4は肝幹・前駆細胞の肝細胞への分化を抑制する一方で胆管上皮細胞への分化を促進し、肝幹・前駆細胞の2方向性の分化決定に重要な役割を担う可能性が示唆され、将来の肝疾患に対する細胞移植療法への応用に有用であると考えられた。この結果を海外学術論文Gastroenterologyに投稿し2009年3月号に掲載された。
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