Research Abstract |
白血病でのSPHK1発現上昇の報告は,タンパクや活性レベルではこれまでにいくつかなされているが,詳細な発現調節機序についての解析はいまだなされていない。そこで本研究では,赤白血病モデル細胞株を用いて, SPHK1発現量の調節機構を転写調節の観点より詳細に解析を行う。フレンド細胞を分化誘導剤HMBAで処理したときのSPHK1,および関連する転写因子発現量の経時的な変化の確認をタンパクレベル, mRNAレベルで行った。いずれも分化誘導抵抗性株において感受性株よりも高いSPHK1発現が見られた。また,分化誘導剤で完全にコミットさせた後に通常状態で数日培養すると,分化誘導抵抗性株は分化誘導剤処理前の状態に戻り, SPHK1発現量も処理前と同等まで回復したが,感受性株は通常培養状態に戻しても再び増殖することができず, SPHK1発現量も回復しなかった。次に,分化誘導に伴うSPHK1発現量の変化が転写レベルにおいて調節されているのかを検討した。フレンド細胞におけるSPHK1の転写開始点を5'-RACE法により決定した。 WEBで報告のある2つの転写開始点aおよびbのうち, aタイプと一致したため, SPHK1aの転写開始点から上流1.7kbをフレンド細胞由来のゲノムをテンプレートにしてPCR法によりクローニングした。クローニングしたプロモーター領域を転写活性測定用のルシフェラーゼベクター(pGL3 basic vector)に組み込み,プロモーター活性解析用の出発材料とした。さらに,各種制限酵素を用いてdeletion mutantを作製した。これらを用いた予備実験から,分化誘導に伴うSPHK1発現量の変化は転写レベルで調節されていることが確認され,次年度は転写調節に必要な最小領域とそこに結合する転写因子の同定を行う予定である。
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