2008 Fiscal Year Annual Research Report
ras遺伝子変異による発がん過程での活性窒素を介したDNA損傷の役割とがん予防
Project/Area Number |
20890254
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
大西 志保 Suzuka University of Medical Science, 薬学部, 助手 (80511914)
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Keywords | DNA損傷 / 発がん機構 / ras遺伝子 / 8-ニトログアニン / バイオマーカー |
Research Abstract |
肺がんの発生には「Kras遺伝子」の変異が重要と考えられている。発がん機構の多段階説によると単一遺伝子の変異だけでは発がんに不十分であるため、Kras遺伝子変異から発がんに至るまでには、更なるDNA損傷に基づく変異が蓄積していると予測できる。本課題では、Kras遺伝子変異によって肺癌をひき起こすモデル動物を用いてDNA損傷の蓄積を解析し、多段階発がんにおけるDNA損傷塩基の役割を解明する。 本年度は遺伝子改変動物を用いて、通常では正常型Krasを発現しているマウスに変異型Kras遺伝子をコンディショナルに発現させて肺腫瘍を形成させ、免疫組織化学的にDNA損傷塩基の蓄積を解析した。これまでに、炎症に起因する前癌病変組織においては、変異誘発性のDNA損傷塩基のひとつである8-ニトログアニンが、発がんに先駆けて生成することが報告されていることから、8-ニトログアニンの生成および蓄積を解析した。また酸化ストレス条件下で生成するDNA損傷塩基の一つであり、酸化的DNA損傷のマーカーとして知られる8-oxodGについても解析した。 その結果、変異型Kras発現により腫瘍を形成したマウスの肺では、とくに腫瘍形成部位において、8-ニトログアニンおよび8-oxodGの生成が顕著にみられた。野生型コントロールマウスの肺、および遺伝子改変マウスで変異型Kras遺伝子を発現させなかったコントロールマウスの肺では、これらDNA損傷塩基の生成は認めなかった。以上より、Kras遺伝子変異による肺腫瘍の形成過程では、さらにDNA損傷が蓄積されていることが明らかとなった。これらDNA損傷塩基は変異誘発性であることから、多段階発がんに関与すると考えられる。がん進行過程におけるバイオマーカーとしての有効性を示すために、今後さらに詳細な検討が必要である。
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