2008 Fiscal Year Annual Research Report
カンジダの新規ストレス応答蛋白質によるクオラムセンシングを介した病原性発現制御
Project/Area Number |
20890274
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
永尾 潤一 Fukuoka Dental College, 歯学部, 助教 (30509047)
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Keywords | Candida albicans / クオラムセンシング / 形態変換 / シグナル伝達 / Heat shock protein |
Research Abstract |
病原性真菌Candida albicansの病原性因子の一つである酵母形から菌糸形への形態変換能は、様々な環境因子の影響を受け、そのシグナルは主にcAMP-protein kinase A (PKA)経路とMitogen-activated protein kinase(MAPK)経路により伝達され発現する。近年、菌密度依存性の病原性発現制御であるクオラムセンシング(QS)の存在がC.albicansにおいて明らかになり、QS分子であるfarnesolが、酵母形から菌糸形への形態変換抑制など病原性発現を制御していることが示された。本研究で着目した新規ストレス応答遺伝子MSI3は、酵母形から菌糸形への形態変換初期に関与する遺伝子として単離され、菌糸形成誘導因子であるN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)やQS分子であるfarnesolにより劇的な負の制御を受ける。本研究ではC.albicansのQSシステムを介した病原性発現制御におけるMSI3の機能を解析することを目的とした。 MSI3の破壊株の構築を試みたが、MSI3が必須遺伝子である可能性が示唆されたため、テトラサイクリン応答型プロモータで構成的に高発現できる株を構築した。このMSI3発現制御株を用いることで、MSI3は生育必須遺伝子であること、熱ストレス耐性には関与しないことが明らかになった。さらにcAMP-PKA経路を介して菌糸形成を誘導するGlcNAcまたはグルコースを含む最少培地を用いて菌糸形成に及ばす影響を解析した。その結果、両培地において同様に菌糸形成が観察されたが、MSI3の機能について以下のことが示唆された。(i)MSI3はGlcNAcによる菌糸形成誘導条件下でfarnesolによる菌糸形成抑制を促進する。(ii)farnesolおよびMSI3はPKAまたはその下流のシグナル伝達を負に制御している。以上のように、MSI3は生育必須因子であり、さらにGlcNAc特異的な経路およびcAMP-PKA経路を負に制御することでQSによる形態変換制御に重要な働きをしていることを新たに見出すことができた。
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