2009 Fiscal Year Annual Research Report
カンジダの新規ストレス応答蛋白質によるクオラムセンシングを介した病原性発現制御
Project/Area Number |
20890274
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
永尾 潤一 Fukuoka Dental College, 歯学部, 助教 (30509047)
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Keywords | Candida albicans / 病原真菌 / Heat shock protein 70 / 形態変換 / クオラムセンシング / シグナル伝達 |
Research Abstract |
我々は病原真菌Candida albicansの酵母形から菌糸形への形態変換初期に関与する遺伝子としてheat shock protein(HSP)70 familyに属する新規遺伝子MSI3(multicopy suppressor of iral mutant 3)を見出している。本研究では、Candida albicansの菌密度依存的病原性発現制御機構(クオラムセンシング:QS)を介した病原性発現制御におけるMsi3pの機能を解析することを目的とした。 標準株CAF2-1では菌糸形成を誘導するグルコースまたはGlcNAcに応答しMSI3の発現が強く抑制されることが明らかになった。この結果から我々は、MSI3発現量の減少がC.albicansの菌糸形への形態変換に重要な役割を果たすのではないかと仮説を立てた。そこで、MSI3の恒常発現のためにテトラサイクリン応答型プロモーターを用いてMSI3発現制御株(tetMSI3)を構築した。tetMSI3株の解析により、Msi3pは生育必須因子であることが示された。また、Msi3pの恒常発現により、以下のことが明らかになった。(1)マウスへの病原性を低下させることが示された。(2)Ras1-cAMP-PKA経路のドミナントアクティブ発現による菌糸形成を抑制したため、Msi3pは本シグナル伝達経路を負に制御することが示唆された。また、同経路を抑制するQS分子farnesolにより菌糸形成抑制が促進された。(3)細胞壁ストレス剤および酸化ストレスに対し著しい感受性を示したことから、ストレス応答にも関与することが明らかになった。以上の結果から、Msi3pは、Candida albicansの細胞増殖、Ras1-cAMP-PKA経路による菌糸形成、ストレス応答を制御する多様な機能を有していることが明らかになった。QS分子farnesolと同じシグナル伝達経路を制御することから、C.albicansのQSに重要な役割を果たすことが示唆された。本研究成果は新たな抗真菌薬開発につながるものと期待される。
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