Research Abstract |
本研究は,歯科CADにおける人工歯製作の品質向上のために,簡単な操作で患者の歯のすり合わせ運動(歯牙滑走運動)をCAD上に再現し,それを人工歯設計に応用することを目的とする.平成20年度は,その実現のため,1.歯列経路形状の測定実験,2.歯牙滑走運動シミュレータの自動設定アルゴリズムの検討,3.シミュレータによる歯牙滑走運動の再現実験を行った.まず,1については,歯科臨床において歯牙滑走運動を器械的に再現する,咬合器に教育用歯列模型を設置し,前方滑走運動中における歯列の移動経路形状(機能印象)を記録する実験を行った.その結果,設計する人工歯の対合歯が存在していれば,ワックス材を用いることにより,3次元形状測定可能な機能印象を記録できることを確認した.今年度は前方滑走運動のみの再現であったので,次年度は側方滑走運動についても再現できるか検討する.2については,機能印象の形状データを用いて,先行研究において開発した歯牙滑走運動シミュレータを患者ごとに自動設定するアルゴリズムを提案した.提案法においては,シミュレータの設定値を変えながら歯列の運動経路を計算し,入力した機能印象形状データと一致しているかを比較する.これは一般に最適化問題となり,その評価関数はいくつかの局所最適解をもつことが多い.そこで,シミュレーテッド・アニーリング法を用いて,最適解を求めることとした.3において,提案法により歯牙滑走運動を再現できるのか確認するための実験を行った.1の方法により機能印象を記録し,2のアルゴリズムによりシミュレータの最適値を計算した.その結果,局所最適解に陥ることなく,最適値を導き出せることを確認した.また,その再現精度は高く,提案法の実用化への可能性が示唆された.
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