2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規リゾリン脂質が制御する神経回路形成及び神経回路再生の分子機構の解析
Project/Area Number |
20890286
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森 達也 The Institute of Physical and Chemical Research, 神経成長機構研究チーム, 研究員 (70469922)
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Keywords | 軸索ガイダンス / 成長円錐 / 神経細胞 / リゾリン脂質 / カルシウムイオン |
Research Abstract |
平成21年度の研究実績 (1)Lysophosphatidylglucoside(Lyso-PtdGlc)受容体の探索 TrkA陽性DRG神経細胞とTrkC陽性DRG神経細胞において、スクリーニングで得られたTrkA陽性DRG神経細胞に多く発現するGPCR(平成21年度の研究成果として報告済み)の内、Lyso-PtdGlc受容体の候補遺伝子2種類について、HEK293安定発現細胞株の樹立を試みた。その結果、1つの候補遺伝子を発現する安定発現株を複数クローン得られた。得られた細胞株を用いてLyso-PtdGlc存在下における細胞内カルシウム及びMAPキナーゼの活性を測定したが、Lyso-PtdGlcに対する応答は認められなかった。 (2)Lyso-PtdGlcが媒介する軸索ガイダンスの分子メカニズムの解析 TrkA陽性DRG神経細胞の軸索に対するLyso-PtdGlcの反発活性の分子作用機構を明らかにするため、細胞内シグナル伝達因子に対する薬理阻害剤存在下における軸索ガイダンスアッセイを行った。その結果、細胞内のカルシウムイオンをキレートすると軸索反発活性が消失し、逆に軸索成長円錐がLyso-PtdGlcの濃度勾配が高い方へと誘引された。また細胞膜上に存在するカルシウムチャネルを阻害するカドミウムイオン存在下でLyso-PtdGlcによる軸索反発活性が誘引へと変換されたのに対し、細胞内カルシウムストアからのカルシウムイオンの放出を阻害してもLyso-PtdGlcの軸索反発活性は維持された。さらに、Lyso-PtdGlcを神経細胞の培養液中に添加すると軸索成長円錐内のカルシウムイオン濃度が上昇した。以上のことから、Lyso-PtdGlcは細胞外から細胞膜上のカルシウムイオンチャネルを介してカルシウムの流入を引き起こし、カルシウムイオン依存性のシグナル伝達経路を介して軸索の伸長方向を制御することが示唆された。
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