2009 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類養育行動中枢である視床下部内側視索前野の解剖学的・機能的解析
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20890287
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉田 さちね The Institute of Physical and Chemical Research, 黒田研究ユニット, 研究員 (90513458)
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Keywords | 養育行動 / ノックアウトマウス / Anterior commissural nucleus(ACN) |
Research Abstract |
不適切養育の理解・予防のためには、まず正常な養育行動を司る神経メカニズムを明らかにする必要がある。そこで我々は、基本的な養育行動が哺乳類進化において保存されていることに着目し、マウスモデル系を用いて養育行動の神経メカニズムを解析している。過去の研究から、脳内養育行動中枢は視床下部内側視索前野(MPOA)の主として背外側部に存在すると考えられている。初年度にはニューロンの転写活性の指標であるc-Fos蛋白質発現の免疫組織化学的解析により、養育行動を行っているマウスでは背外側MPOAの中でも特にAnterior commissural nucleus(ACN)と呼ばれる部位が特異的に活性化すること、そしてACNは多くのオキシトシン(OXT)産生ニューロンを含むが、これらのOXTニューロンではなくその周辺の大型ニューロンが養育行動に伴って活性化することが示唆された。さらにACNにはOXTの他、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)産生ニューロン、GABA作動性およびグルタミン酸作動性ニューロンも存在することが明らかになった。そこで本年度はACNに発現している分子が養育行動にどのような影響を与えているのかを調べるため、OXTとTRHの各単独ノックアウトマウスおよびダブルノックアウトマウスを使って養育行動異常の有無を検討した。養育行動異常の判定指標に巣作り行動および仔をくわえて巣に戻す"レトリービング"行動を用いたところ、いずれのマウスでも異常は見られなかった。このことから今回指標に用いた養育行動発現はOXTやTRHを介さず、仔の匂いや鳴き声、触覚刺激などの知覚刺激によって誘起されることが示唆された。本助成研究により、いくつかある仔特有の刺激のうち、どの知覚刺激がどのACNニューロンを活性化させるのか、というACNの機能解明へ向けた一つの突破口となる疑問を見出すことができた。
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Research Products
(2 results)