2020 Fiscal Year Annual Research Report
現代カザフスタンにおける多民族共存主義の形成と展開についての研究
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20F20013
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小杉 泰 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 教授 (50170254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE Jinhye 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 現代カザフスタン / コリョ・サラム / コリアン・ディアスポラ / 中央アジア / 多民族共存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現代カザフスタンにおけるコリョ・サラムをはじめとする少数民族に注目し、国民国家に生存基盤を築くマイノリティ社会のダイナミズムの観点から、多民族国家カザフスタンにおける多民族共存主義のありようを理論と実態の両側面から検討することを目的としている。具体的には次の3つである:①これまでの研究を踏まえた上で、市井の人々をも分析対象にすることで、カザフスタン・コリョ・サラム社会全体の動態を捕捉する。②基幹民族中心の国民統合に対し変容していくマジョリティ社会の動態に着目することにより、国民統合に対するカザフ人社会とコリ ョ・サラム社会の差異、またそれらの間の関係を明らかにする。③カザフスタンにおける諸民族について比較する視座から、他の少数民族も研究対象とし、それぞれ異なる文化的基盤を持っているマイノリティ社会の動態の分析を行うことにより、カザフスタンにおける多民族共存主義の実態についての総合的結論を導出する。 上記の3つの研究活動に対応する形で、フィールド調査や研究発信を行う予定であったが、コロナ禍の影響を受けたため、フィールド調査については、現地での協力者のサポートを受けたアンケート調査の実施で代替し、それに基づいたカザフスタン・コリョ・サラム社会変容の実態を考察した。また、基幹民族中心の国民統合に対し変容していくマジョリティ(カザフ人)社会の動態を、カザフ人の論壇となっている新聞記 事や関連文献などから分析した。これらの結果を利用して、カザフスタンにおける国民統合に対するコリョ・サラムの今日的な位置づけについて、具体的検証をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の3つの目的に対応した研究活動について、それぞれ進展があり、新たな知見を得ることができた。それらの知見を、李眞恵の大学院博士課程における研究成果に加えて、その全体を1冊の学術書(単著)として刊行する準備を進めた。また、The Journal of Direction and Development of Korean Studies in Russia, 18th Asia Pacific Conference Ritsumeikan Center for Asia Pacific Studies (RCAPS), International Conference on Scientific Statements “Russia-South Korea Dialogue: Lessons of History and Challenges of Modernity”, 1st Biennial Workshop of Koryo-saram Scholars (WorKS)などで国際的に成果発信をおこなった。ジャーナル論文等は5本が掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の3つの研究目的とそれに対応する研究活動を、さらに推進する。コロナ禍の現況を踏まえ、フィールド調査に代えて現地での協力者のサポートを得て、必要なデータ収集をおこない、国際的なオンライン研究集会を組織してデータ分析や理論的考察のための討議をおこない、研究発信をさらに進める。 具体的には①カザフスタン・コリョ・サラム社会変容の実態の調査と検討、②基幹民族中心の国民統合のなかで変容するマジョリティ(カザフ人)社会の動態に関する分析(カザフ人論壇となっている新聞記事や関連文献などを利用)、③これらの研究に基づく成果の社会発信をおこなう。 研究発信としては学術書の刊行(李眞恵の単著)をめざし、アジア・ディアスポラの事例をグローバルに比較研究するための国際ワークショップを開催し、その成果を刊行するとともに、日本中央アジア学会(JACAS)、日本中東学会(JAMES)、日本移民学会(JAMS)等で研究発表と論文投稿を行う。
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