2021 Fiscal Year Annual Research Report
Manipulation of spin-orbit torque in a spin-orbit ferromagnet single layer for future spin devices
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20F20366
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 雅明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30192636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JIANG MIAO 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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Keywords | スピン / スピン軌道トルク / 磁化反転 / 強磁性半導体 / 垂直磁化 / 低消費電力デバイス / スピントロニクス / (Ga,Mn)As |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、エピタキシャル成長により垂直磁気異方性をもつ単一の強磁性半導体GaMnAs薄膜をInGaAs/GaAs 基板上に形成し、垂直磁気異方性をもつGaMnAs薄膜に電流を流すことにより、スピン軌道トルク(SOT)によるきわめて高効率の磁化反転に成功した。さらにこれは単一の磁性層でありながらGaMnAs中のDresselhaus型スピン軌道相互作用により電流がスピン流に変換され、スピン軌道トルクがGaMnAsの磁化に働くことによる磁化反転が起こったものと理解される。磁化反転のために必要な電流密度JCは従来のSOT磁化反転の報告値よりも約2桁も小さい。さらに、GaMnAsの薄膜においては、スピン軌道相互作用の性質から[110]方向に電流を流すことがスピン軌道トルクを用いた磁化反転に有効であること、およびMn濃度の不均一性に起因して電流分布が不均一になっており、GaMnAsの膜厚を変えることにより電流により生じる磁場の空間分布が変わることを見出した。磁化反転の妨げとなりうるフィールドライクトルク成分を、電流によって生じる磁場により最適化できるようにGaMnAs膜厚を調整した結果、世界最小の電流密度である4.6×10^4A/cm2の微小電流密度(従来より3桁低いJc)で180度磁化反転を実現した。本研究により、物質の内部に大きなスピン軌道相互作用が存在すれば、電流により磁化を反転できることがわかった。この場合、単層膜に単純に電流を流せば良く、従来のように二重層構造を精密に制御して作製する必要はない。従って、デバイス構造がより単純になる。また、トップゲート構造をもつ電界効果トランジスタを作製し、ゲート電圧によるSOTの強さとJcの制御、さらにゼロ磁場での磁化反転にも成功した。本研究の成果は、超低消費電力スピンデバイスの実現に向けて重要な進展をもたらすものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
強磁性半導体の単層薄膜を用いて、電流を流すことによって生じるスピン軌道トルク(spin-orbit torque, SOT)を利用して、世界最小の電流密度4.6×10^4 A/cm2で磁化反転に成功した。これは広く行われている金属多層膜におけるスピン軌道トルクによる磁化反転で必要とされる電流密度(約10^7 A/cm2)よりも3桁程度小さな値であり、SOTによる磁化反転に要する電流密度としては世界最小の値である。また、電界によるJOTおよびJcの制御に成功し、ゼロ磁場(印加磁場なし)での磁化反転も観測した。
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Strategy for Future Research Activity |
SOTによる磁化反転のメカニズムを解明、さらなる高効率磁化反転の研究を行い、ゼロ磁場磁化反転の物理的理由と機構を解明し、低消費電力で動作する不揮発性メモリとスピンデバイスの技術確立に貢献する。
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Research Products
(12 results)