2020 Fiscal Year Annual Research Report
キュウリモザイクウイルスの2bによる宿主抵抗性のエピジェネティクス制御の研究
Project/Area Number |
20F20389
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 税 北海道大学, 農学研究院, 教授 (60281854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIM HANGIL 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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Keywords | キュウリモザイクウイルス / 花芽形成 / アラビドプシス / 2b |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、キュウリモザイクウイルス(CMV)の2bタンパク質(2b)がシロイヌナズナで花芽形成を促進する現象について、そのメカニズムを解明することを目的に行われている。本年度は、まず2bの発現量に関連してシロイヌナズナの花芽誘導が起きるのか明らかにするために、様々なレベルで2bを発現する形質転換ラインを複数作成した。これらを固定した後、花芽形成を観察したところ、2b発現量が相対的に低レベルのもの(ライン1)では、野生型と大差なかった。一方、中程度の発現量のもの(ライン3)では、明らかな花芽誘導が観察された。さらに、高レベルの発現量のもの(ライン4)では、興味深いことに、花芽形成が著しく遅延した。すなわち、2bは発現量に応じてシロイヌナズナの花芽形成を正反対の方向に制御できることが明らかになった。花芽形成は、これに関わる遺伝子群の発現をRNA-directed DNA methylation (RdDM)と呼ばれるエピジェネティクス制御によって誘導されることから、2bはこのエピジェネティクス制御のスイッチを乗っ取ることができるものと考えられる。 一方、CMV感染シロイヌナズナでは、WRKY70と呼ばれる転写因子の発現が2bの発現レベルに応じて制御されることがわかっている。WRKY70のシロイヌナズナでの発現レベルに関して、タイムコースをとってモニターしたところ、野生型では、花芽形成が開始する播種後5週間頃まで徐々に上昇していき、花芽形成開始後には、下降に転じることが判明した。これに対して、ライン3では野生型とは対照的に、花芽形成前には、WRKY70の発現は下降気味であり、播種5週間後からは、上昇に転じることが判明した。我々は、2bがWRKY70の発現を制御することによって花芽形成を誘導することができるのだろうと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、予想通りに2bの蓄積レベルがWRKY70遺伝子の発現制御に関与することを確認できた。2bの発現レベルが相対的に高い時には、花芽形成が逆に抑制されたことは、予想外であったが、2bによる花芽形成誘導のメカニズムが複雑であることを示唆し、極めて興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、計画通り順調に進んでおり、今後は、WRKY70遺伝子やその制御下にあるSA/JAシグナル伝達系遺伝子群、さらには、それらと関連するウイルス抵抗性遺伝子群のエピジェネティクス制御について解析を進める予定である。まず、whole genome bisulfite sequencing (WGBS)によって網羅的にこれら遺伝子群のメチル化レベルについて解析し、花芽形成に関与するものを絞り込む。
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