2020 Fiscal Year Annual Research Report
Tageting PD-L1 signals evoked in cancer stem cells
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20F20409
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
妹尾 昌治 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (90243493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AFIFY SAID 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント / がん幹細胞 / アミノ酸配列のホモロジー / CD274 / CD44陽性細胞 / ヒアルロン酸 / PI3K/AKT/mTOR / ラパマイシン |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害の奏効率が必ずしも高くないこと、および一般にがん幹細胞は化学療法に耐性であることに対して、有効ながん幹細胞治療方法を確立する糸口を見出すことが本研究の目的である。まず、がん幹細胞が生体で腫瘍を形成した場合に、発現しているPD-L1タンパク質は、そのホモログCD274などとの間で細胞内領域のアミノ酸配列のホモロジーが高く保存されており、塩基性アミノ酸とセリン/スレオニン残基に富んだ特徴的な一次構造を有している。これは細胞内でキナーゼの基質となる可能性や他の細胞内シグナル因子や核酸との結合を示唆しており、PD-1がPD-L1を刺激してがん幹細胞中にシグナルを誘起して、免疫チェックポイントから逃れる可能性がかんがえられた。このためにまず、準備として、活性化T細胞のモデルとして、PD-1発現Jurkat細胞の作成を進めている。さらに、iPS細胞由来のがん幹細胞の比較対象として利用できるがん幹細胞として、がん細胞株でPD-L1発現しているヒト乳癌由来細胞株HCC1954細胞、MDA-MB231細胞、BT20細胞からCD44陽性細胞のがん幹細胞の濃縮をヒアルロン酸とPD-1のペプチドリガンドとしてRK-10ペプチドを用いて行なっている。同時にこれらのがん幹細胞においてPI3K依存的なAKTのリン酸化がラパマイシン感受性か否かについて評価検討を行なっている。現状は、これら準備を整えている段階が主で、これらを終えたのちにPD1/PD-L1結合によるPD-L1側の細胞内シグナル伝達の有無を精査するとともに、がん(幹)細胞側における免疫チェックポイントの意義を調べ、mTORの阻害剤であるラパマイシンでPI3K/AKT/mTORのシグナル経路を標的してがん幹細胞を効果的に抑制する方法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
活性化T細胞のモデルとして利用できる細胞は、ヒトT細胞株Jurkat細胞にPD-1発現ベクターを導入して用いる方針をとったが、この細胞株樹立に時間を要している。iPS細胞から樹立したがん幹細胞に加え、ヒトがん由来細胞株に存在するがん幹細胞を評価対象に含めて検討を行っている。また、PD-L1のリガンドペプチドに25merから成るRK-10を利用してPD-L1を高発現するがん幹細胞マーカー陽性細胞の濃縮を進めているが、方法論については種々あるので検討を重ねている。さらに、ラパマイシンに対する反応性は、PD-1+Jurkat細胞に対して変化するかどうかの指標になると考え、現在使用できる候補の細胞からラパマイシン耐性および感受性を調べてAKT/mTORの活性化について調べている。これらの準備が揃えば次年度の計画を進展させることができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から調製を進めているがん幹細胞を継続して調製を進める。また、すでに調製できている細胞から順次PD-1刺激としてPD-1+Jurkat細胞あるいはRK-10ペプチド刺激を与えてリン酸化による細胞内シグナルが誘起あるいは減弱されるかを精査してがん幹細胞側の感受性を確認する。中でもAKT/mTORの活性化が認められる細胞については、以下の実験において最優先で解析を進める。感受性が認められる細胞に対し、前年度から調べているラパマイシン耐性が上昇するがん幹細胞に対して、抗PD-L1抗体によりPD1/PD-L1の結合を阻害してPD1刺激が抑制される場合のラパマイシン感受性の変化を検討する。この結果、PD1刺激によりAKT/mTORの活性化が増強されてラパマイシン耐性が上昇する細胞においては、siRNAを用いてがん幹細胞のPD-L1発現を抑制して、PD1刺激依存的なラパマイシン耐性の上昇が起こらないことを確認する。これらの結果が得られれば、PD1/PD-L1免疫チェックポイントにおけるT細胞はPD1によりがん幹細胞のAKT/mTORシグナル経路を活性化し、細胞の生存活性を高めているとin vitroで結論できる。さらに、ラパマイシンがPD1/PD-L1免疫チェックポイント阻害と相乗的に効果を示すことができれば、がん幹細胞を標的とする抗がん剤の新しい組み合わせとなることが期待されることから、免疫不全マウスを用いて担がんマウスを作成してin vivoによる試験を行なって効果を検証する予定である。
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