2021 Fiscal Year Annual Research Report
交配試験によるアスペルギルスの種の概念と抗真菌薬耐性株拡散の検討
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20F20772
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢口 貴志 千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (60361440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HUBKA VIT 千葉大学, 真菌医学研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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Keywords | Aspergillus fumigatus / Aspergillus fumigatus関連種 / 薬剤感受性 / アゾール系抗真菌耐性 / 交配 / MAT遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
アゾール系抗真菌耐性のAspergillusの発生増加が、欧米、日本で認められている。千葉大学真菌医学研究センターは全国の真菌症リファレンスセンターとして臨床および環境由来の病原真菌を多く保存している。そのうち日本産のA. fumigatus およびその関連種を使用し、抗真菌剤の感受性パターンと耐性メカニズムの研究を行う。それらと欧州分離株のデータと比較することにより、国内のアスペルギルス症原因菌の性状と、種間交雑の有無や系統関係を明らかにすることを目的とする。 まず、本研究を推進するにあたり、使用する菌株選択のため、特定遺伝子の塩基配列による菌種同定の確認と抗真菌剤の感受性データの取得を実施した。また、交配に関与する遺伝子MATのタイプの決定し、これらのデータより、臨床由来株、環境由来株、薬剤感受株、耐性株の中から、交配試験に使用する菌株を選択した。 薬剤感受株、耐性株のうち、MATタイプの異なる株間の交配試験を実施し、同種間における交配ばかりでなく、異種間においても交配が成立した。同種間のF1世代においては、MATタイプの比率、薬剤感受性を測定し、異種間においてはF1世代だけでなくその後の世代の継続性を検討する。 さらに、A. fumigatusとは別sectionにおいて既知種とは異なる種が発見され、上記研究と同手法で解析を実施し、新種であることが確認された。また、白癬菌においても、同様の手法が適用できることが判明し、分類体系の見直しを進め、新種が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を推進するにあたり、b-チューブリン遺伝子の塩基配列による菌種同定の確認と抗真菌剤の感受性データの取得を実施し、使用する菌株を検討した。 千葉大学真菌医学研究センターに保存されているAspergillus fumigatusの関連種 A. viridinutans 種複合体の中から日本産の臨床由来株、環境由来株のうち、A. udawgawae、A. felis、A. pseidoviridinutansにおいて、アゾール薬剤に対する耐性株と感受性株を選択した。また、交配に関与するMAT遺伝子のタイプを、選択した菌株において決定した。A. udawgawae、A. felisの臨床株、環境株、A. pseidoviridinutansの環境株においては、MAT遺伝子のタイプ MAT1-1-1、MAT1-2-1の出現比率に差がなかった。しかし、A. pseidoviridinutansの臨床株においては、試験した6株すべてがMAT1-1-1であった。この現象はヒトへの感染性と何らかの関係が示唆される。 A. felisにおいて、耐性株と感受性株を交配させ、有性胞子を形成させ、それから得られたF1世代の無性胞子の検討を行った。MAT遺伝子のタイプは、ほぼ1:1であり、アゾール薬剤に対して多くの株で耐性を示した。これまでのA. fumigatusの関連種の環境株における薬剤感受性試験の結果、A. fumigatusとは異なり、多くの株において耐性が見られたことから、アゾール薬に対して自然耐性を有すると推定されている。そのため、薬剤耐性に関与する遺伝子は顕性遺伝(dominant)する可能性が示唆された。 以上より、本研究を推進するための基盤データは、順調に取得できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Aspergillus fumigatusの関連種 A. viridinutans 種複合体の中から日本産の臨床由来株、環境由来株のうち、A. udawgawae、A. felis、A. pseidoviridinutansにおいて、アゾール薬剤に対する耐性株と感受性株を相対する遺伝子タイプによる交配試験を実施する。それから得られる有性胞子をエタノールもしくは熱処理することによる発芽させ、それらのF1世代の無性胞子を取得する。それらの薬剤感受性、MAT遺伝子のタイプの解析を進める。b-チューブリン遺伝子だけでは、菌学的な位置づけが不明瞭な菌株は、カルモジュリン遺伝子、RPB1、2遺伝子などの塩基配列を決定し、詳細な菌学的な位置づけを確定する。 これまでA. fumigatusのアゾール耐性株においては、その耐性メカニズムとして報告されている、エルゴステロール合成酵素遺伝子 cyp51A 遺伝子の点変異の有無、タンデムリピートのパターンを確認する。これらのデータより、A. viridinutans 種複合体における、分類体系の再検討、薬剤感受性の獲得メカニズムについて考察する。 さらに、Aspergillus fumigatusの関連種以外の菌種、Aspergillus section flavipedes、白癬菌においても、この方法を使用して菌学的な位置づけの確認を実施する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Re-examination of species limits in Aspergillus section Flavipedes using advanced species delimitation methods and description of four new species2021
Author(s)
Sklenar F, Jurjevic Z, Houbraken J, Kolarik M, Arendrup MC, Jogensen KM, Siqueira JPZ, Gene J, Yaguchi T, Ezekiel CN, Silva Pereira C, Hubka V
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Journal Title
Studies in Mycology
Volume: 99
Pages: 100120-100120
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Discovery of new Trichophyton members, T. persicum and T. spiraliforme spp. nov., as a cause of highly inflammatory tinea cases in Iran and Czechia2021
Author(s)
Cmokova A, Rezaei-Matehkolaei A, Kuklova I, Kolarik M, Shamsizadeh F, Ansari S, Gharaghani M, Minovska V, ajafzadeh MJ, Nouripour‐Sisakht S, Yaguchi T, Zomorodian K, Zarrinfar H, Hubka Vit
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Journal Title
Microbiology Spectrum
Volume: 9
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research