2020 Fiscal Year Annual Research Report
Resurgence theory and its application to physics
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20F20787
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤森 俊明 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 助教 (60773398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GLASS PHILIP 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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Keywords | リサージェンス / 非摂動効果 / ソリトン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、量子論における非摂動効果を理解するための鍵となると期待される、「リサージェンス理論」、特に「リノーマロン問題」に焦点を当てて研究を行った。量子論の非摂動現象を解明することは現代の物理学において重要な課題の一つである。それらは摂動論で解析することは不可能であるが、リサージェンス構造と呼ばれるものが存在し、それを通して摂動・非摂動効果の間には非自明な関係があると考えられている。リサージェンス理論は発散する摂動級数と非摂動的な鞍点解の対応を議論するものであるが、QCDや非線形シグマ模型などの漸近的自由な理論においては「リノーマロン型の発散」と呼ばれる対応する鞍点解が知られていない特別な型の発散が存在している。仮にリノーマロンに対応する鞍点解が存在しなければ、それはリサージェンス理論の破綻、更には場の理論の摂動論の根本的な欠陥を意味するため、対応する鞍点解の存在の正否は重要な問題である。これがいわゆるリノーマロン問題と呼ばれる問題であり、長年の間未解決である。 本研究では、特に、物性物理学などにも現れる「非相対論的な場の理論系」において、リサージェンス理論を適用することによって解析を行った。近年そのような理論には、非自明なリサージェンスの構造が存在することが示されているが、本研究ではその構造を作り出す原因となっているソリトン的オブジェクトの同定を行い、定量的な評価によってその重要性を明らかにした。この研究は複素鞍点とリサージェンス構造の関係の理解を深めるための足がかりとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リサージェンス理論では発散する摂動級数のボレル和に含まれるいわゆる複素不訂正と、それと関係する複素鞍点解の関係が重要となる。リサージェンス構造を理解する上で必要となる研究のステップの第一段階として、そのリサージェンス構造を決定している、最も基本的な鞍点解を見つける必要がある。本研究では1+1次元非線形シュレーディンガー系におけるリサージェンス構造に本質的な寄与をしているであろう複素鞍点解を導出した。この研究によってこの系のリサージェンス構造を理解するための基盤の構成が完了したということができる。このような複素鞍点の同定を場の量子論において行った例は限られており、今後の進展といった観点からも重要な結果であるということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究によって1+1次元非線形シュレーディンガー系におけるリサージェンス構造を決定づける最も基本的な複素鞍点解の導出を行った。それが系の非摂動的物理にどのように寄与しているかを定量的に議論するためにレフシェッツシンブル法による経路積分の評価という手法に着目して研究を行っていく。また可積分性などを用いて系のリサージェンス構造を明らかにしていくための手法の開発を行っていく。 その他の方向性として、同様の解析手法を応用して、2次元Yang-Mills理論や主カイラル模型などにおける複素鞍点解とリサージェンス構造、特にリノーマロン問題について解析を行っていく。 また「局所化」の方法で厳密な結果が得られるような超対称場の理論において、「Cheshire cat resurgence」の手法に基づいた系の変形を利用することによって、リサージェンス構造を引き出し、その解析を行っていく。
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Research Products
(5 results)