2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of an innovative inerter-damper for high-performance seismic isolation system
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20F20796
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十子 幸樹 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20521983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GUO XUEYUAN 東北大学, 災害科学国際研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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Keywords | 長周期地震動 / 免震構造 / 複素減衰 / ダイナミック・マス / Maxwell要素 / 負剛性 |
Outline of Annual Research Achievements |
免震構造は建物の下部に水平方向に柔らかい特別な層を設けることで地震時における地動の主要な周期成分を建物に伝達させない構法であるが,近年免震周期に近い長周期成分を有する地震動が観測され免震構造を含む長周期構造物の脆弱性が指摘されている.本研究課題では,この課題の解決策として震動の長周期成分を選択的に減衰する震動制御装置の開発を目指している.方法としては,長周期成分に対して大きな減衰力を選択的に発揮する複素減衰に着目し,その物理的実装に有望な一般化Maxwellモデルを基本とした装置を検討してきた.2021年度の検討では,Maxwell要素にダイナミック・マスを加えることで,装置の次数を2次系とする方法を検討した.Maxwell要素が1次の遅れ系であるのに対して,質量要素を加えることで系が2次となる.これにより,ダイナミック・マス-バネ-粘性減衰要素の3要素で構成される1台の装置が,2つのMaxwell要素(合計四要素)と同等の働きをすることを示した.このように,同等の減衰性能を発揮するために必要となる要素の数を減らす方法を見いだせたことは,実用上重要な成果である. 2021年度に新たに発案した装置においても,既往研究で指摘されていたように望ましくない貯蔵剛性の増大がある.これについて,免震層剛性調整項としての負剛性要素とダイナミック・マスを用いることを検討した.これら2つの要素により2つの振動数において,増大してしまった貯蔵剛性をキャンセルすることが可能となった.数値解析により,この2つの指定振動数を免震周期と上部建物の基礎固定時固有周期に設定することが有効であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実用的な面では,これまでMaxwell要素を基本として考えてきた複素減衰の因果的物理近似モデルについて,ダイナミック・マスを加えることで,より少ない要素で目標性能が得られることを示した.これを理論的に裏付ける研究として,提案システムの要素数を無限に増大させた場合の検討を行ったところ,複素減衰を高振動数領域で良く近似するBiotモデルに一致することを明らかにした.要素数を無限にすることは実用的には非現実的ではあるが,複素減衰モデルの代表的な近似モデルであるBiotモデルと提案モデルの関係,位置づけを明らかにする重要な成果を得た. 類似研究として,ダイナミック・マス-バネ-粘性要素の直列結合体を複数並列に配置したGolla-Hughes-McTavish (GHM)モデルがあるが,本研究ではダイナミック・マスと粘性要素が並列結合となった場合についても理論を拡張した.要素数の極限の検討も本研究におけるオリジナルな成果である. 以上のように,当初計画では想定していなかった発見もあり,概ね順調に進展していると評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,実用化も視野にいれて数値的な検討を行った.提案装置の有効性について,理論的な検討により既往の因果的複素減衰近似モデルとの関係も明らかにした.2022年度は,提案装置の実現可能性と有効性について検証実験を行う予定としている.試験体は,東北大学が保有する免震架台,粘性-マスダンパー,コイルばねユニットを組み合わせることで構成することができるが,必要に応じて改修して特性を調整する.試験装置は東北大学が保有する大型振動台(テーブルサイズ3m×3m,最大積載重量10tonf)を用いる予定である. これまでに得られた理論的な成果と,実験結果をまとめて国際専門誌に論文を執筆し発表する予定である.
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Research Products
(1 results)