2021 Fiscal Year Annual Research Report
高次元神経力学系および大規模ネットワークにおけるノイズ誘起発火現象の解析
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20F40017
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中尾 裕也 東京工業大学, 工学院, 教授 (40344048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHU JINJIE 東京工業大学, 工学院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2020-11-13 – 2023-03-31
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Keywords | 確率共鳴 / fast-slow系 / 弛緩振動 / Koopman作用素 / 漸近位相・振幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
ノイズ誘起発火現象の解析を中心に、今年度は以下のような研究を実施した。
(i) ノイズによる自己誘起確率共鳴(Self-induced stochastic resonance, SISR)を生じるfast-slow系における確率的な周期軌道に関する成果をまとめ、論文を国際学術誌に公表した。確率的な軌道の平均初通過速度に対するマッチング条件を導入することにより、軌道のヌルクラインのブランチ間の遷移位置を推定し、これをブランチに沿う遅い運動と合わせることによって、確率的な軌道を予測する方法を提案した。これを具体的なFitzHugh-南雲モデルのモンテカルロシミュレーションにより確認した。FitzHugh-南雲モデルのパラメータが興奮性領域にある場合と振動性領域にある場合のいずれにおいても、確率的な軌道とその周期を、幅広いノイズ強度に対して正確に予言できることを確認した。
(ii) ノイズの影響下で確率的な振動を示す非線形振動子に対して、Koopman作用素論の立場から確率的な漸近位相と振幅を定義した。先行研究において系の随伴Fokker-Planck作用素の固有関数を用いた漸近位相の定義が提案されていたが、Koopman作用素論の立場から、これが決定論的な非線形振動子に対する漸近位相の定義の自然な拡張となっていることを示し、また振幅も自然に定義できることを議論した。さらに、半古典近似の可能な量子散逸系の非線形振動現象に対しても理論を拡張した。理論的予測の妥当性を数理モデルのシミュレーションにより確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、コロナのため来日が半年以上遅れたが、今年度は順調に研究を推進し、ノイズ誘起発火現象に関する理論的な成果を得て、複数の研究成果を国際学術誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
SISRにより確率的な振動を生じる要素について、今年度の研究で得られた確率的な軌道に対して、さらにその位相縮約理論を発展させ、複数の要素の同期現象等を解析する。
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