2021 Fiscal Year Annual Research Report
専門的知見の普遍性と不定性:法学と文化人類学を例にした科学技術との比較研究
Project/Area Number |
20H00002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本堂 毅 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60261575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米村 滋人 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40419990)
尾内 隆之 流通経済大学, 法学部, 教授 (40460026)
渡辺 千原 立命館大学, 法学部, 教授 (50309085)
鈴木 舞 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (70761633)
平田 光司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, ダイヤモンドフェロー (90173236)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | STS / 専門知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,科学技術と人文社会系の諸科学の専門的知見について,その普遍性と不定性についての比較研究を行っている.本研究期間に生じた新型コロナウイルスによるパンデミックは,医学を含む科学技術だけではなく,法学や科学技術社会論,生命倫理学などの専門知の知見の有効性が,その適用限界と共に問われ,科学技術の専門知との共通性や違いを整理する必要性を明らかにしている.そこで,本研究では,新型コロナウイルス感染症に関わる医学的専門知と合わせて,その医学的専門知を用いて法学的,あるいは生命倫理学的な解析を行っている事例,社会的意思決定に関わる専門知の発信が行われている事例を解析し,専門的知見の普遍性と不定性を議論した. たとえば,過去の最高裁判決に依拠し,緊急事態宣言による飲食的の強制的休業を是とする憲法学者の言説において,その主張の暗黙の前提に置かれている科学的事実が,新型コロナウイルス禍での科学的事実とは異なるにも関わらず,暗黙の前提によって結論が導かれていることを明らかにした.一見法学に閉じた議論に思えるものであっても,前提に踏み込んで解析を行うと,自然科学的な知見への法学者の独自解釈が前提となっており,法学に閉じえない問題であることが分かった.そこで研究代表者が,その点について法学専門誌上で論文を発表したところ,別の憲法学者の目に留まり,その憲法学者の論考が裁判に提出された.その結果,先の憲法学者の解釈とは正反対の判決がなされ,確定判決となった. 新型コロナウイルス禍では,同様の事例が自然科学,医学,人文社会科学の様々な研究や専門家の発信の際に生じていることを明らかにし,学術雑誌や学会等で発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文科系と自然科学系の専門知について,その普遍性と不定性の共通点や違いを明らかにする解析研究は順調に進捗している.ただし,新型コロナの影響で海外調査が遅れているため,海外調査を元に行う解析面に遅れが生じている..
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の影響で遅れが生じていた海外調査を積極的に行うことで,遅れをリカバーする予定である.
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