2020 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsideration of Jarmo: Neolithization in the Eastern Wing of the Fertile Crescent
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20H00020
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
常木 晃 筑波大学, 人文社会系(名誉教授), 名誉教授 (70192648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 展也 中部大学, 国際GISセンター, 教授 (10365497)
安間 了 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (70311595)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジャルモ遺跡 / イラク・クルディスタン / 肥沃な三日月地帯東部 / 新石器化 / 天水農耕と湧水農耕 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新石器化研究の原点ともいえ、学史的に極めて重要なイラク・クルディスタンのジャルモ遺跡を最新の調査法と研究法で捉えなおすとともに、肥沃な三日月地帯東部での新石器化と社会の複雑化に関する新たなモデルを提案・検証し、西アジア地域全体の新石器化研究を前進させることを目的としています。そのために、1)ジャルモ遺跡の再発掘調査および2)ジャルモ遺跡周辺の古環境復元調査を実施しています。 令和2年度、3年度は、コロナ禍により日本から調査隊が派遣できませんでしたが、その代わりにクルディスタン自治区スレマニ文化財局に依頼して、小規模な試掘調査を実施してもらい、その成果を日本に送付してもらうことで、実施項目1)ジャルモ遺跡の再発掘調査を進めてきました。 令和4年度に実施した令和2年度繰越金による現地調査では、研究分担者によって、実施項目2)ジャルモ周辺の古環境復元調査が、精力的に行われました。ジャルモ遺跡周辺の古地形復元のためのサーベイは渡辺展也により行われ、SfMを用いた3D計測とLiDAR計測、遺跡周辺のオフサイトの踏査が実施されました。その結果、ジャルモ遺跡北面のチャムガウラ川が遺跡の崖面を浸食してる速度や、遺跡周辺のオフサイトに新石器の遺物がかなりみられること、などが判明し、接峰面図やDEMの3D図、オフサイトの位置を考慮した内挿図などが作られて、新石器時代の古地形の復元に近づきました。また、古地形の復元に不可欠な地形年代については、安間了を中心に遺跡付近の18地点で採取された岩石試料の原位置宇宙線生成核種を用いた予察的な地形年代の算出が試みられ、4試料について36Clの年代が得られています。その結果、4試料はリッジ最上部から河床部に向かって年代が若くなり、ジャルモ遺跡が繁栄していた新石器時代には、チャムガウラの河床は遺跡とほぼ同じ高度付近で蛇行していたと推定されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度、3年度については、本研究の目的達成のための実施事項である1)ジャルモ遺跡の再発掘調査および、2)ジャルモ遺跡周辺の古環境復元調査という現地調査が、コロナ禍のために日本隊によって実施できず、スレマニ文化財局による小規模なジャルモ遺跡の発掘調査に留まりました。コロナ禍での精いっぱいの現地調査でしたが、どうしても細部にまでは手が届かず、もどかしい現地調査になったことは否めません。そのため当初の2年間は十分な調査成果を上げたとはいえず、科研費の多くを繰越せざるを得ませんでした。 しかしながら令和4年度に、令和2年度の再繰越科研費で実施しました2)ジャルモ遺跡周辺の古環境復元調査では、研究実績の概要で触れましたように、古地形を復元するための様々な成果を得ることができました。その成果に基づいて、新石器時代のジャルモ遺跡の古地形と景観を復元できる見通しを立てることができましたので、研究は順調に進行していると考えてよいと思われます。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に実施しました、令和2年度再繰越科研費による2)ジャルモ遺跡周辺の古環境復元調査、および令和3年度繰越科研費による1)ジャルモ遺跡の再発掘調査では、幸い大きな成果を上げることができました。全体としては、当初2年間の現地調査を十分に行うことができなかったために、研究全体の進行が遅れたことは確かですが、令和4年度の調査研究は、それを挽回するだけの余りある成果を挙げ、当初目的である、ジャルモ遺跡の再評価と同遺跡が存在する肥沃な三日月地帯東部の新石器化の解明に、少しずつ近づくことができています。この流れを大切にして、令和4年度の繰越科研費で実施する現地調査において、ジャルモ遺跡の古地形の復元を完成に近づけるのではないかと見通しています。特に、ジャルモ遺跡の南側に広がるケスタ地形の湧水を利用したコムギ・マメ栽培と、コムギ刈入後の畑地を利用したヒツジ・ヤギの飼育があったことはこれまでの調査研究からほぼ確実と思われますが、それに加えて、ジャルモ遺跡の北側のチャム・ガウラ川を越えた丘陵上もまた、畑地やヒツジ・ヤギ飼育の適地であった可能性が、古地形の復元から提案できるようになったことも、大きな成果と考えます。 研究上の問題点としては、ウオーター・フローテーションなどを実施しているにもかかわらず、炭化コムギやマメ類が発掘土壌から十分に採取できていないことで、湧水農耕の存在を古地形の復元からだけでなく古植物学的成果からも証明する必要が残されていることです。コムギの栽培については、令和5年度の調査で、鎌刃光沢の研究から深化させる予定です。また当時の動物相の復元については、現在、資料に基づいて古動物学者の研究が進められており、これから成果が明示され得るものと期待しています。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Preliminary Report of the Charmo (Jarmo) Prehistoric Investigations, 20222023
Author(s)
Tsuneki, A., Watanabe, N., Anma, R., Jammo, S., Saitoh, Yu, Saber, S. A.
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Journal Title
Al-Rafidan
Volume: 46
Pages: 1-34
Peer Reviewed
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[Presentation] Human subsistence in Iranian prehistory revealed through lipid residue analysis in pottery vessels.2022
Author(s)
Casanova, E., Davoudi, H., Zazzo, A., Boco, A. Bernbeck, R., Pollack, S. Tsuneki, A., Ghafoori, O.O.B., Nokandeh, J., and Mashkour, M.
Organizer
28th Annual Meeting of the European Association of Archaeologists. Budapest,
Int'l Joint Research
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