2020 Fiscal Year Annual Research Report
行政契約と行政計画を主軸とした当事者自治的公法秩序に関する比較法的研究
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20H00055
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
亘理 格 中央大学, 法学部, 教授 (30125695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 裕之 中央大学, 法務研究科, 教授 (10169021)
徳本 広孝 中央大学, 法学部, 教授 (20308076)
岸本 太樹 北海道大学, 法学研究科, 教授 (90326455)
野田 崇 関西学院大学, 法学部, 教授 (00351437)
北見 宏介 名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
洞澤 秀雄 南山大学, 法務研究科, 教授 (60382462)
小澤 久仁男 日本大学, 法学部, 教授 (30584312)
津田 智成 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (00779598)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 当事者自治的公法秩序 / 行政契約 / 協定 / 公私協働 / 私人間協定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研研究計画の第1年度に当たる本年度は、日本と欧米諸国(仏独英米)における行政契約論の到達状況を把握するとともに、当事者自治的公法秩序の基礎的理論や概念を本科研メンバー間で共有することを目的に、複数回の研究会を開催した。他方、新型コロナウィルス感染症の感染状況故に、当初予定していたフランスととドイツにおける行政契約の実態把握のための海外調査を行うことができなかったため、両国における行政契約の実態把握については不十分な成果に終わり、課題を残した。 以上の研究の結果、ドイツでは元来、行政契約が法治国原理や民主性原理と対立することを理由に契約や協定を多用する手法への警戒感が強いと考えられる一方、ハンプルク市におけるBIDの導入をめぐる議論等を通じて、私人間協定をも含めた行政契約法論の新展開ともなり得る理論状況にあることが明らかになった。これに対しフランスでは、元来、行政契約法論が発達してきたという経緯がある一方、公役務理論の下で行政契約における公共性を重視する見地から、事情変更等を理由とする契約条項の一方的変更を許容する等、行政契約の私法契約に対する独自性を重視する傾向が強いことが判明した。 以上のように独仏間の差違が明らかになる一方、契約を通じての公私協働に関しては、公共性ないし行政主導を重視する点で、仏独間には共通性があることも明らかになった。これに対して、英米の行政契約論においては、元々私人間協定の存在感が強く、公私協働における民間主導が先行するのではないかとの仮説が成り立ち得ることから、今後は英米行政契約法と公私協働との関係を解明する必要があることも、明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の初年度であることから、本科研メンバー(研究分担者)による研究成果の研究会メンバー相互の共有化のための研究会を複数回にわたって開催する一方、わが国において蓄積された行政契約法研究成果の吸収のための文献研究を中心に進めた。以上により、当事者自治的公法秩序研究において行政契約論が占めている位置及びその重要性の解明、及びフランスとドイツにおける行政契約法論の到達状況の把握という面では、研究が当初の予定以上に大きく進捗した。特に行政契約と公私協働との関係を解明する必要性とともに、公私協働にも行政主導型と民間主導型があり得るとの発想を得ることができことは、大きな成果である。 他方、新型コロナ感染症の感染状況故にフランスとドイツにおける行政契約の実態調査を行うことができなかったため、右両国における実際の運用実態の把握を通じて行政契約法理論の実施状況を検証する作業は、当初の予定よりもかなり遅れている。 以上のように実態面での調査研究に遅れが生じていることは否定できないが、行政契約法に関する基礎的概念及び理論面に関する研究は大きく進捗したことから、本研究計画総体としては、おおむねほぼ順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の第2年度である2021年度は、主に行政計画法を研究対象とすることとなるが、同時に、第1年度において遅れ気味であった行政契約法の実態面での調査研究を平行して進める必要がある。その際、新型コロナウィルス感染症の感染状況を考慮しながら、主に文献研究と研究会での講演と討議を中心に、研究を進めることとする。 他方、当事者自治的公法秩序の基礎的概念と理論に関する調査研究を目的に、研究会開催により、本研究計画メンバー間及び本研究計画メンバー以外の研究者との討議の場を複数回設ける必要があり、こうした討議の蓄積を通して、当事者自治的公法秩序の基礎的概念と理論の明確化を図る必要がある。 以上の双方向からの研究の成果を踏まえ、本研究計画の第3年度(2022年度)には、行政契約法と行政計画法という2つの中心的テーマに関するその時点での研究成果を総合化することにより、当事者自治的公法秩序の概念と理論及びその具体的制度設計に関する中間的総括をなし得るところまでレベルアップを図る予定である。
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