2021 Fiscal Year Annual Research Report
観光科学のための数理システム基盤整備とその有効性の実証
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20H00088
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
津田 博史 同志社大学, 理工学部, 教授 (90450163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 雅和 千葉工業大学, 社会システム科学部, 教授 (00462169)
片桐 英樹 神奈川大学, 工学部, 教授 (40325147)
西出 勝正 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40410683)
蓮池 隆 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50557949)
一藤 裕 長崎大学, 情報データ科学部, 准教授 (90590274)
中妻 照雄 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90303049)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 観光科学 / 選択意思決定法 / 観光ファイナンス / 最適観光ルート / 観光地の魅力度 / 人流測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年1月頃から日本国内で、コロナウイルスの感染が始まり、2022年3月時点で感染拡大の第6波を経験してきているが、いまだコロナは終息していないことから、2年間にわたる国内外の観光客の激減により、観光地や観光施設、宿泊施設の経営の持続可能性(サステナビリティ)の重要性が問われている。すなわち、研究課題の核心をなす学術的、実用的な「問い」として「観光産業の持続可能性」である。コロナ禍が終息しない中、2021年度の研究実績は、①主として、京都市、長崎市の観光に関連する公的データ、自治体などのオープンデータ、モバイルデータをはじめとした多様なデータの収集を行った。加えて、コロナ禍によるインバウンド観光客の激減による観光地の経済的な影響を調べるため、2020年度よりもデータ収集の対象地域を拡大させ、大阪府、京都府の飲食店、旅館などの宿泊施設、小売店の財務データ、倒産データを購入した。モバイルデータの収集に関しては京都市、長崎市を対象とした。②京都市を訪問する日本人観光客の嗜好・興味に応じた観光地、観光施設単位での魅力度ランキングを階層化意思決定法により推定し、実際の人気観光地の訪問客数のランキングと比較することによって、観光地、観光施設の魅力度に関して有意義な知見が得られた。 なお、コロナウイルスの感染拡大により、密閉、密集、密接の三密状態を避けるように政府から要請が出たことから、Webシステムを利用した非対面形式で基本的に研究集会を実施した。また、コロナウイルスの感染を避けるため、2022年3月4日に非対面式のオンラインによる観光科学シンポジウムを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
京都市を訪問する日本人も含めた観光客数上位9カ国の嗜好・興味に応じた観光地、観光施設単位での魅力度ランキングを階層化意思決定法により推定し、実際の人気観光地の訪問客数のランキングと比較することによって、観光地の魅力度に関して有意義な知見が得られたこと、観光地魅力度を目的関数とし、観光時間・費用条件のもとで目的関数を最大化する最適観光ルートの推定が可能になったことから、概ね計画通りである。さらに、モバイルデータにより観光客の実際にたどったルート情報を収集することができれば、観光地魅力度の推定精度を高めることができることから、京都市の観光地のLTE、Wi-FiAPのデータの収集の時間帯を分け、属性情報に基づいて集計を行い、時間帯別の観光客分布の確認と行動分析のための基礎調査を行った。分析結果として、コロナにより人出が激減したことにより、モバイルデータ提供元の統計処理の制限から具体的な数値データを収集できないケースがあることがわかり、①収集時間帯、②年齢、③観光客の居住地のエリアを纏めるなど行い、数値データを得るためにどの程度の粒度にすべきかが把握できた。 京都市の観光地エリア間の観光客の人流を可視化することができれば、将来,新型コロナ禍が終息した暁にはまた国内外から多くの観光客が京都市に押し寄せることが予想されることから、オーバーツーリズム問題が再度,起こらないようにするには観光客が特定の観光地に集中しないように観光客の分散化を図るための政策をサポートすることが可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、XAI(explainable artificial intelligence、説明可能AI)技術を用いた観光者自身の興味・嗜好に近い観光地を多く含む観光ルートの推定や予測に関して理由を説明してコンシェルジュ的にアドバイスすることが可能な「観光支援システム」の基礎技術を確立することが目的の1つであることから、強化学習をはじめとした深層学習の応用、自然言語処理技術、画像処理技術の応用を推進していく。加えて、将来,新型コロナ禍が終息した暁にはまた国内外から多くの観光客が京都市に押し寄せることが予想されることから、オーバーツーリズム問題が再度,起こらないようにするには観光客が特定の観光地に集中しないように観光客の分散化が重要であるため、観光客の人流の可視化データに基づいたエージェントモデルによるシナリオ分析を用いたシミュレーション実験を行い、オーバーツーリズム問題解消に向けた施策を提案し、その有用性について検証を行っていく。 また、観光による消費を増加させるには、観光地域のホテルや旅館などの宿泊施設に滞在する観光客を増やす必要がある。そこで、京都市は、滞在・宿泊型観光の推進を推進してきた。一方、近年、団体旅行向けプランに満足出来ず、自分で旅行計画を立てる人の数が増加している。彼等はインターネットを利用して宿泊予約などの旅行の手配を行う。このような人々は個人旅行者と呼ばれ、インターネットの普及に伴い、今後も増加すると考えられる。京都市では、このような個人旅行者が全旅行者の7割以上を占める 。京都市への旅行者のほとんどが個人旅行者であることを踏まえると、個人旅行者にとり宿泊先のホテルや旅館のクオリティが重要であることから、ホテルや旅館などの経営に関する理論や分析も行う予定である。理論研究を更に進めて経済学的な示唆に富む結果を得ていきたい。
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Research Products
(13 results)