2021 Fiscal Year Annual Research Report
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20H00125
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井手口 拓郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (30735999)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞温度 / ラベルフリー計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命活動にとって温度は重要な働きをしていることが知られているが、細胞活動と細胞温度の関係には未解明な部分が多い。これまでの細胞温度計測は、局所温度に応じて強度や寿命が異なる蛍光温度プローブにより行われてきたが、蛍光プローブによる間接的な計測は細胞内の他の環境変化にも依存するため、温度計測の正確さに不定性が残る。本研究では、蛍光温度プローブを用いずにラベルフリーで細胞温度を計測する手法、および、熱拡散を可視化する計測手法を開発している。 細胞内の温度をラベルフリーで計測する手法として、自発ラマン散乱を用いた温度計測系の構築を進めた。広帯域の自発ラマン散乱スペクトルを感度良く計測することのできるシステム開発を進め、温度計測の原理検証実験として水の温度計測を行い、熱電対による温度計測によく一致する結果を得た。 細胞内の熱拡散をラベルフリーで計測する手法として、光回折トモグラフィによる屈折率顕微鏡を用いた計測系の構築を進めた。水および細胞内に局所的に与えられた熱による屈折率変化の時間発展を時間分解計測し、熱拡散の定量を行った。また、蛍光温度プローブを用いた計測との比較にも着手した。 上記以外のラベルフリー分光手法の開発も行い、広帯域の赤外スペクトルとラマンスペクトルを同時に取得する相補振動分光法の実証、圧縮センシングの技術を利用した高速広帯域でデュアルコム赤外分光法のシミュレーションによる提案を行った。また、分子振動指紋領域の広帯域赤外パルス光源の開発も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、自発ラマン散乱を用いた温度計測系および、光回折トモグラフィを用いた熱拡散計測系を自作し、両システムによる計測が進んでいる。自発ラマン散乱を用いた温度計測系ではテスト試料である水の温度計測に成功しており、おおむね順調に進捗している。光回折トモグラフィを用いた熱拡散計測系では、細胞内の熱拡散計測に成功しており、当初の計画以上の成果が出ている。また、将来技術であるその他の分光手法の開発においても、複数の計測系の原理検証実験及び数値シミュレーションによる成果が出ており、当初の計画以上の成果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
自発ラマン散乱を用いた温度計測系による細胞の温度計測には細胞内生体分子の自家蛍光への対策が必要である。今後は、まずこの課題の解決策を見出して、その後に細胞内温度計測の実証に進む。光回折トモグラフィを用いた熱拡散計測系では、細胞内熱拡散の評価をさらに推し進める。また、蛍光温度プローブによる計測結果との突合せを行い、過去の先行研究の結果との比較などを通して、当該分野の課題にアプローチする。その他の分光手法開発も引き続き推し進める。特に、細胞計測の将来技術となりうる手法の開発に着手する。
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Research Products
(13 results)