2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of plasma window for vacuum interface and its application to quantum beam science
Project/Area Number |
20H00141
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
難波 愼一 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (00343294)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 広樹 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 副部長 (70280716)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プラズマウィンドウ / アークプラズマ / 真空インターフェース / 超高密度プラズマ源 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は3mm径小型カスケードアーク源と8mm径大口径カスケードアーク源の開発を行った. 小型アーク源に関しては大気圧電子ビーム加工を意識して,従来よりも1/3程度の重量とした.さらに,中間電極,アノードをすべてモリブデン製とすることで熱負荷に耐えられるようにした.カソードについても傍熱型ホローカソード熱陰極を新たに設計・製作した.この改良により,大気圧100 kPaと10Paの圧力勾配をカソードーアノード間で維持しつつ,2時間以上の連続運転に運転に成功した,当初の要求圧力差が今回初めて実現できたので,大気圧電子ビーム加工の準備を始めた.具体的にはプラズマ膨張部の圧力を低下させ,電子ビームの減衰を防ぐ.このため大型のターボ分子ポンプを2台導入した. 一方,大口径カスケードアーク源についても大幅な見直しを行った.特に,これまでカソードと中間電極間にガラス管を入れていたが,この領域がプラズマ冷却・拡散につながると考えてこの部分を除去して直接カソードと中間電極が対向するような配置に変更した.また,大口径アークでも傍熱型ホローカソード熱陰極を新たに設計製作した.これによりプラズマの高温高密度かが期待できる.実験の結果,安定に100Aまでの放電に成功し,その際の電子密度,温度を可視分光計測により評価することができた.電子温度密度に関してはトムソン散乱,レーリー散乱計測系も整備し,精度良くプラズマパラメータを評価できるようになった.ちなみに,トムソン散乱と発光分光で得られた結果はほぼ同じ値を示し,両計測が正しく評価できているといえる.六ホウ化ランタン(LaB6)熱陰極は長時間運転で放電が停止してしまった.この原因を調べるため陰極の組成分析,SEM画層取得を行った.その結果,LaB6陰極のボロンがモリブデン材に侵入し,仕事関数の上昇,及び,モリブデン材に損傷を与えることが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルゴン小型カスケードアークプラズマ源については,プラズマウィンドウとして要求される圧力勾配(100kPa, 数Pa)が達成されたため研究開発はほぼ終了と判断し,次年度に計画している大気圧電子ビーム加工のための真空排気設備の改良,及び,電子ビーム制御用のアインツェルレンズの開発を行う段階まで来ている. 一方,ヘリウム大口径アークプラズマ源は上流部のガス導入マスフローの容量制限,及び,下流部の排気速度制限により,達成できているのは2.6 kPaと16Paと目標であるそれぞれ7 kPa, 1Paをまだ実現できていない. そのため今後は大流量マスフローの導入と大排気量ポンプ2台を設置し,ウランビームが通過するガスセルストリッパー用の差動排気システムに要求される目標値を達成する.また,上記に示した六ホウ化ランタンとモリブデンの物性特性(特にボロンの浸食性)が悪いことが判明しているので,両者の間に耐熱性のあるカーボンシートを巻き付け,100Aの大電流放電を行う.この措置はモリブデン,六ホウ化ランタンの両方の損耗,損傷を大きく抑制することが予備実験で判明しており,今後はこの方針に従って放電を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は小型カスケード源によるプラズマウィンドウで,大気圧電子ビーム加工を実際に行う計画である.電子ビーム源( 27 kV)はすでに整備が終わっており,電子ビームがワークに照射された際のX線遮蔽対策を講じる.具体的には5mm厚の2枚のステンレスが溶接可能かでプラズマウィンドウの性能を評価する. 一方,大口径カスケードアーク源では高性能プラズマウィンドウとするためには,さらに高温高密度ヘリウムプラズマの生成が不可欠である.そのため,カソード部,アノード部の電子温度,密度をトムソン散乱で精密計測し,なにをどうすれば高温高密度プラズマが発生するのかをまず明らかにする.また,各中間電極,アノードの熱負荷を流量計,温度計を用いてリアルタイム計測し,損傷が起こる全長を予想できるように装置の整備を行う.
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