2020 Fiscal Year Annual Research Report
New Development of Computational Physics with Tensor Network Scheme
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20H00148
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藏増 嘉伸 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (30280506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 宜文 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 技師 (40598231)
武田 真滋 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (60577881)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | テンソルネットワーク / 符号問題 / 有限密度 / 相転移 / Nambu-Jona-Lasinioモデル / Hubbardモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
テンソルネットワーク(TN)スキームとは,多体問題をTN形式によって定式化し,高精度解析を行う一群の理論的・計算手法的枠組みである.既存の数値計算手法(モンテカルロ法など)と異なり,(i)原理的に符号問題・複素作用問題がないこと,(ii)計算コストの体積依存性が対数的であること(一辺の長さLのd次元格子体積L^dに対する計算コストはd×ln|L|に比例),(iii)グラスマン数(反可換性を持つ数)を直接扱えること,(iv)物理量の期待値だけでなく分配関数そのものを計算できること,などの魅力的な特徴を有している.本研究課題では,TNスキームにおけるラグランジアン形式に基づくアプローチの一つであるテンソル繰り込み群(TRG)を発展させ,既存の数値計算手法では困難であった物理モデル(特に符号問題・複素作用問題が存在するモデル)の解析に取り組み,4次元有限密度Nambu-Jona-Lasinio(NJL)モデルと空間2次元のHubbardモデルの相構造解明を目指す. これらの目標に向けて設定された2つのサブ課題は,[1]高次元用並列コードの開発,(ii)物理量の計算手法の開発,である.令和2年度は,サブ課題[1]に関しては,既にわれわれによって開発済みのAnisotropic TRG(ATRG)の並列コードをもとに,Grassmann数化されたATRGの並列コードを開発した.これを用いることにより,本研究課題の目標の一つである4次元有限密度NJLモデルの相構造解析を行い,低温・高密度領域においてカイラル対称性の回復が一次相転移で起きることを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最終目標は2つあり,一つは4次元有限密度NJLモデルの相構造解析で,もう一つは空間2次元のHubbardモデルの相構造解析である.前者に関しては,令和2年度中に相構造解析に成功し,既に結果も学術雑誌に掲載済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の2つの最終目標のうち,一つの目標は既に達成したので,今後はもう一つの目標である空間2次元のHubbardモデルの相構造解析に注力する.TRG法によるHubbardモデルの計算は全く前例がないため,先ずは解析的な厳密解が存在する空間1次元のHubbardモデルを計算し,その結果を厳密解と比較することによってTRG法の有効性や計算精度の検証を行う計画である.その後,空間2次元のHubbardモデルへと移行予定である.
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