2021 Fiscal Year Annual Research Report
ランタノイドイオン結晶のレーザー操作によるニュートリノ質量分光法の開発研究
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20H00161
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉見 彰洋 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (40333314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 太彦 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 客員研究員 (70108447)
黒澤 俊介 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (80613637)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニュートリノ / コヒーレンス / ランタノイド / 結晶 / 電子スピン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度に製作した Er:YLF 結晶に対して電子スピン共鳴(ESR)実験を行い、ニュートリノ研究にとって重要な結晶中での電子スピンの振舞いの研究を行った。結晶中の Er イオンの4f電子遷移に対し、マクロコヒーレンス増幅機構を利用して、弱いニュートリノ対放出遷移レートの増幅に伴って現れる電子スピン磁化の緩和時間や線幅を測定し、考察を深めておくことが重要である。Er イオン濃度 0.1% 及び 0.01% の結晶(1 x 2 x 3.5 mm)に対して、温度 5~35 K の範囲でESR実験を行った。この温度範囲では明瞭な ESR 信号が観測された。Er は6種類の安定アイソトープが存在するが、唯一核スピンを持つEr-167の超微細構造も観測された。また結晶軸と静磁場との角度をスキャンした ESR 強度スペクトルを取り、1軸結晶中のg因子テンソルパラメータを確認した。各温度における ESR スペクトルの詳細を調べると、15 K 以上ではローレンツ関数型で、10K 以下ではガウス関数型であることが観測された。このことから、15K 以上ではErイオン 4f 電子スピンと結晶格子間の交換相互作用による緩和が支配的で、10K 以下では残留スペクトル幅が存在し、スピン-スピン間の双極子相互作用による緩和が支配的であることが示唆された。以上の取得したデータを総合的に判断すると、温度 5K ではスピン縦緩和時間は 1 ~ 0.1 ms の程度であり、横緩和時間に関しては Li-6, 7 とEr 間のスピン-スピン相互作用に依るものであると推定される。以上の結果から、ニュートリノ研究を進めるにあたって、最低ラインの緩和時間があることが認められたが、Li 元素のアイソトープ純化によってより線幅の狭い系が実現できそうだとの期待が持てる。また、Er:YSO 中の超放射実験の理解も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標に到達するには、前提としている結晶中の Er イオン 4f 電子系の線幅が狭く、スピン緩和時間が長いことが実現されていることが重要である。このことを実験的におさえることができ、電子スピンの線幅・緩和についてある程度の理解が進んだので。また、Er:YSO 結晶中での 1 光子超放射実験も進めて、CW励起光に対してその超放射パルスが周期的に生成されることの理解が進んだこともある。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶中のスピンの線幅・緩和に関して、もう1ステップ進めたい。具体的にはより直接的な手法により緩和時間を算出する測定を行う。また、結晶母体中の Li 元素のアイソトープの純化を行い、より狭い線幅の実現を目指す。その他、今年度は2色のレーザー光を結晶に照射し、結晶中の Er 電子に対して実際にコヒーレンスを生成することを目指す。
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Research Products
(3 results)