2022 Fiscal Year Annual Research Report
ALMA受信機を活用した中性炭素原子輝線の広域分光撮像による低金属量分子雲の研究
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20H00172
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
濤崎 智佳 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (40356126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌崎 剛 国立天文台, アルマプロジェクト, 助教 (00413956)
田中 邦彦 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (00534562)
小宮山 裕 法政大学, 理工学部, 教授 (20370108)
江草 芙実 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (30644843)
廿日出 文洋 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70719484)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 星間物質 / サブミリ波 / 中性炭素原子 / 低金属量銀河 / デジタル分光システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、開発した新デジタル分光観測システムを使い、運用を再開したASTE望遠鏡で中性炭素原子からの[CI](3P0→3P0)輝線の観測を実施することができた。まず、大質量星形成領域の代表例として、天の川銀河の分子雲W51を観測し性能評価を行った。サブミリ波望遠鏡JCMTによる観測データと強度および速度がよく一致することを確認できた。その上で、本研究の観測ターゲットである低金属量矮小銀河NGC6822のいくつか大質量星形成領域に対し、中性水素原子輝線[CI]と一酸化炭素分子輝線CO(J=4-3)及びCO(J=3-2)の観測を行った。並行して、ALMA望遠鏡によって取得したNGC6822のCO(J=1-0) 広域観測のデータ解析を進めた。その結果、ASTE望遠鏡によって取得されたCO(4-3)とCO(3-2)のCO(1-0)に対する強度比は、大質量星形成領域HubbleVにおいては、両者とも~1という値が得られた。この領域の分子ガスは、形成されている大質量星の加熱により、少なくともJ=4まで熱化されていると考えられる。一方、[CI]輝線は検出されず、[CI]/CO(3-2)の輝度温度比の上限として <1.6が得られた。低金属量環境下にある大質量星形成領域では、紫外線や宇宙線の影響でCOが乖離され、CO輝線ではトレースされない、「COダーク・分子ガス」が存在し、[CI]/CO輝線比が上昇すること、そして[CI]輝線が、より良い分子ガスのトレーサーになることが理論的に予測されている。その一方で近傍の低金属量銀河であるSMCでは、0.4-0.1程度が報告されていた。本研究によるNGC6822の観測結果は、SMCでの観測結果と整合的で、[CI]の分子量のトレーサーとしての有効性の検証に重要な意味を持つ可能性がある。しかしながら、その検証にはより深い観測が必要になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度に発生した望遠鏡の不具合と、その後のコロナ禍のため、観測再開まで長い時間を要したが、新分光計システムのASTE望遠鏡への搭載と、性能評価、一部観測を開始できた。しかし、天候や望遠鏡の別の不具合の発生により、観測時間が当初予定よりも短くなったため、目的とする領域に対する観測の完遂には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に発生した望遠鏡の不具合については、調査により原因がほぼ特定され、現在具体的な対処を検討中である。次年度以降、この問題を解消し、観測領域の拡大とより深い観測を行うことで、[CI]の分子量のトレーサーとしての有効性の検証を進め、研究を加速させたい。
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