2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H00210
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田口 敦清 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70532109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹木 敬司 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00183822)
石飛 秀和 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (20372633)
田中 慎一 呉工業高等専門学校, 自然科学系分野, 准教授 (30455357)
田口 智清 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90448168)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 二光子重合 / 深紫外 / フェムト秒レーザー / 第二高調波発生 / アクリレート / 金属酸化物 / アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで常識的に近赤外光励起が使われてきた「二光子重合」を深紫外領域に展開し、深紫外吸収を利用した光化学的な物質変換相互作用により、二光子造形の対象を樹脂、金属・半導体を含む無機材料や生体適合材料へと拡張する。これにより、物質合成とナノ構造構築を統合し、マルチマテリアル対応の立体ナノ造形の手法を確立する。同時に、光と物質とのコヒーレントな相互作用にも着目し、励起光ベクトル場による反応場形成を活用して、キラル物質などの微視的秩序創成とそのナノ構造化によるデバイス創造へと展開する。さらに、原子・分子をボトムアップで積み上げる原子スケールのナノ構造製造技術の創出を視野にいれ、レーザー捕捉技術を組み合わせた原子組立技術を開拓し、ナノサイエンス、ナノデバイス工学、ナノ材料科学、ナノバイオ医療工学への貢献を目指す。 本年度は、高精度な二光子重合装置を構築を進め、アクリレート系モノマーに対して、400kW/cm^2程度のパワーで重合できることを確認した。また、形状のCADデータからピエゾステージ制御を行う一貫したインターフェースを構築し、今後の高精度3次元造形のベースとなるインスツルメンテーションを完了させた。これを用いて、アクリレート系樹脂や金属酸化物、アミノ酸の重合を行い、重合開始剤を添加しなくても、重合により3次元構造化できることを確認した。さらに、ラマン分光によって硬化現象が光重合反応によるものであることも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、二光子重合装置の設計と構築を行った。現有の波長800 nmのフェムト秒パルスレーザー(パルス幅80 fs、繰り返し周波数80 MHz)をBBO結晶に集光し波長400 nmの可視フェムト秒パルス光を発生する光学系については、結晶の厚み、位相整合角を考慮して、適切な集光Fナンバーを導出し、10%以上の第二高調波発生効率を得た。波長400 nmのフェムト秒パルス光は、低分散なミラーおよび基本波カットフィルター(ダイクロイックセパレーター)を選定し、光を顕微鏡に導入し、油浸対物レンズ(NA1.4)を用いて液体の樹脂に集光する顕微光学系を構築した。集光点はサーボ着きピエゾステージでナノメートルレベルの精度で位置決め可能である。アクリレート系モノマーに対して、400 kW/cm^2程度のパワーで重合できることを確認した。 また、構造データはCADで作成し、スライサーソフトによるGコード化、テキスト処理スクリプトを経て、pythonスクリプトで汎用のスキャナーコントローラーに数値データを引き渡し、ピエゾステージの運動を制御する一連のプログラムパッケージを開発した。これにより、高い自由度で3次元構造の作製が行えるようになった。構築した装置を用いて、アクリレートを材料として3次元構造の造形が行えることを確認した。また、オキソクラスターを前駆体とした酸化ジルコニウム、酸化チタンによる3次元立体造形や、タンパク質の構成物質であるアミノ酸の硬化を確認し、ラマン分光によって光重合反応による硬化であることを確認した。 空間分解能に用いるArFレーザー(波長193 nm)用の半導体露光装置フォトレジストを化学メーカーから調達し、その吸収スペクトルを測定し、おおむね順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 金属ナノ粒子(スフェア、キューブ、ロッド)やナノチューブ、フラーレンなどのナノ物質をレーザー捕捉、重合することで、ナノ物質をボトムアップにより立体構造化する手法を検討する。金属ナノクラスター(金属原子がわずか数個からなり、バルクとは異なる性質を示す金属ナノ材料)のレーザー捕捉と重合を試み、原子スケールの超高精細な金属細線構造の作製の可能性を検討する。原子スケール構造の機械的性質を評価し、ミクロスケールの物性がマクロスケールの機械物性に影響を及ぼす支配因子を探る。 2) 光場の中での原子・分子のダイナミックな運動力学を理解に向けて、光と分子動力学と化学を融合したマルチフィジクス解析を進める。連続体近似が崩れたミクロスケールの粒子群が示す非平衡な振る舞いを、ボルツマン方程式に基づく希薄気体力学により数理的にモデル化することを検討する。
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